公開日:2023-07-26
基幹システムをkintoneでリプレース。高い作業効率と拡張性を得て、攻めの経営が可能に!
株式会社ワイドループ
取締役 川咲 亮司 様
営業部リーダー 丹羽 雅彦 様
2024年6月に行われたkintone hive osakaに登壇され、地区代表に選ばれました!
その時のレポートが公開されていますので、こちらもご覧ください。
ASCII.jp:基幹システム、kintoneでできんちゃう? 実現したマテハン販社のプレゼン強い (1/3)
kintone hive osakaの後半戦は、物流・小売現場で用いられるマテハンのリユースを手がけるワイドループの川咲氏が登壇。インパクトのあるワーディングとイラスト、圧倒的な情報量を関西弁で弾丸のように打ち込むトークで、kintoneでの基幹システム構築をテーマにした強烈なプレゼンを披露した。
株式会社ワイドループは、物流機器の中古買取・販売をWebサイト「中古でマテハン」を通じて行っている会社です。物流倉庫で使われるラック類やカゴ台車などを数多く取り扱われ、関東・関西に7つの倉庫を構えて全国に対応しています。
今回、基幹システムとして利用していた「PCA商魂DX/商管DX」をサイボウズ社のkintoneにリプレースされました。構築には、アールスリーのシステム開発「ハイスピードSI」とノーコードでkintoneをカスタマイズできる「gusuku Customine」が用いられています。
一般的に、kintoneで基幹システムを作るのは難しいと言われていますが、それでも同社がプロジェクトに挑んだ理由と、開発成功の秘訣をうかがいました。
成長戦略の一環として、基幹システムをkintoneでつくりたい
Q:以前は物流機器の中古買取・販売業務においてPCA商魂DX/商管DX(以下、商魂/商管)を基幹システムとし、見積書作成や請求書発行に利用されていたそうですが、当時の課題について教えてください。
川咲様
商魂/商管は経理に強いパッケージ商品ですが、物流機器の中古買取・販売という当社の業態に合っていない点がありました。かなりカスタマイズして利用していましたし、例えば顧客マスタ1つ取っても取引に必要な「フォークリフトの有無」「大型車両の進入可否」といった特有の情報を登録する欄がなく、「必要事項を備考欄にメモする」など運用でカバーしていました。
入出荷業務の管理は商魂/商管でできないため、この部分だけはkintoneを利用していました。1つの取引情報を複数の業務ツールをまたいで行うため、経理書類と倉庫作業の紐づけやシステム間の転記が大変でした。非常に効率が悪かったです。
Q:パッケージ商品が自社の業務にマッチしていないことの他にも、基幹システムのリプレース要因になった点はありますか?
決定打は、会社の成長戦略を定めたことでした。以前のビジネスモデルは、売上が増えるとその分人員が必要でした。このやり方を続けると、固定費がかかる構図から抜け出せません。社長と「コンピューターができるところはシステム化し、人間がやるべきところで付加価値を出そう」と話し合いました。
そう方針が決まったので、色々な業務ツールが絡んでいる状態を変える必要があると思いました。
基幹システムは商魂/商管、コミュニケーションツールはLINE、スケジュール管理やメールはGoogle、入出荷管理はkintoneだったからです。案件情報が様々なツールに点在している為、人によって情報伝達手段が異なり、必要な情報を見つけるのに苦労することが少なくありませんでした。
「じゃあ、どのツールに一本化する?」となった時に、コミュニケーション・スケジュール管理・業務システムなど、業務で使用する機能をすべてカバーできるツールを考えると選択肢はkintone一択でした。
kintoneにはレコードにコメント機能があるので、案件のやり取りをコメント欄に集約できること。社員はkintoneを毎日使っており基本的な操作ができること。ある程度のアプリ作成ができること。これらの点から基幹システムに据えるのはkintoneがふさわしいと思いました。
kintoneの得手不得手を把握することが重要
Q:「kintoneで基幹システムを作る」のは次の点で難しさがあります。それでもkintoneで基幹システムを作ることを決意されご依頼いただいた経緯を教えてください。
【kintoneで基幹システムを作る際に壁になる点】
①仕様検討の壁
既存システムの全機能の洗い出しは、とても大変な作業です。
マニュアルに記載されている機能で行っている業務はもちろん、マニュアルに無い隠れた機能を使用したり、運用でカバーしている業務も把握したうえで仕様を検討する必要があります。
また、システム化したい業務内容を洗い出し、kintoneで行ったほうがいい業務・kintoneでは行わないほうがいい業務を分類し、実際の業務をどのように行うかまで想定して仕様を検討する必要があります。
②社内浸透の壁
操作感が変わるので、既存システムに慣れ親しんでいる社員の抵抗を受ける可能性があります。
③kintone独特のクセの壁
kintoneは機能的な限界値が低いため、既存システムでできていた事ができないことも多いです。我慢したり、妥協点を探ったり、別の方法で解決したりする姿勢で取り組む必要があります。既存のシステムを完全に再現するのではなく、望む状態を見据えつつ、kintoneの特性に合わせてシステムを一から設計する必要があります。
川咲様
アールスリーはできないことを最初に伝えてくれました。例えば、kintoneで再現が難しいものに「月1回の未入金の集計業務(残高管理)」がありましたが、これは作業頻度が低いので我慢できると思いました。他の妥協ポイントもおおよそ作業頻度が低めの業務ばかりでした。一方、日々の業務はkintoneにリプレースすることで爆発的に向上するのは目に見えていましたから、やらないという選択肢はありませんでした。
加えて、将来的にカスタマイズがしやすい点も非常に魅力です。あとは「アールスリーならやってくれるだろう」という自信がありました。
アールスリーは自社のビジネスを理解してくれる
Q:「アールスリーならやってくれるだろうという自信」について具体的に教えてください。
丹羽様
2つあります。1つはノーコードでkintoneをカスタマイズできるgusuku Customineがあることです。ありがとうを贈り合う福利厚生アプリ「39ポイントアプリ」の開発をアールスリーに依頼した時に、私はgusuku Customineを使い始めました。この時、やりたいことを実現できる楽しさ、インターフェースの使いやすさ、拡張性の高さを感じました。これは今回の依頼の決め手の1つです。
ありがとうを贈り合う”39ポイントアプリ”で、感謝の気持ちが見える化されました
2つ目は、開発者の皆さんが倉庫に来てくださり、当社の商品やビジネスモデルを理解し、それに合ったものを作ろうとしてくれたことです。「商魂/商管では叶えられない当社に合うシステム」を作るために真剣に向き合ってくれる姿勢が嬉しくて、アールスリーと一緒にやっていきたいと思いました。
物流機器の中古買取・販売業務にフィットした基幹システムが完成
Q:新・基幹システムの概要を教えてください。
新システムでは、kintoneだけで我々の業務のほぼ全てが完結します。
物流機器の中古買取・販売業務
- ホームページからの問い合わせをアプリに登録
- 顧客や代理店をマスタアプリに登録
- 販売・買取案件管理(商談の進捗管理、売上/仕入れ予測など)
- 買取・販売業務に関する帳票作成(見積書・請求書など)
- 輸送用トラックの手配(買取商品の引き取りや配送処理)
- 入出荷管理(入荷/出荷案件の予定、進捗管理)
- 支払管理(商品の買取先やトラック会社への支払い管理)
- 請求・入金管理(顧客からの入金管理)
①問い合わせ管理アプリ
問い合わせ管理アプリには、ECサイト「中古でマテハン」への問い合わせ内容が自動でレコード登録されます。電話受付分は手入力します。
問い合わせ管理アプリのレコードにはお客様情報だけでなく、フォークリフトの有無や大型車の進入可否の項目があります。買取先、納品先のロケーションによって最適な車両が異なるためです。この項目があることで配送トラブルが防げます。
②買取案件管理アプリ
問い合わせ管理アプリの中から買取に関連する案件を「アクションボタン」で転記します。買取チームが主に利用しており、案件ごとの査定結果の入力や商品の引き取り状況の管理に使います。
③販売案件管理アプリ
問い合わせ管理アプリの中から購入に関連する案件を「アクションボタン」で転記します。販売する商品の選択・商品の在庫引当て・納品先や請求先の登録ができます。
アクションボタンを使って、別のアプリへのレコード登録も簡単にできるようにしています。(倉庫業務の進捗を管理する入出荷予定表アプリへの登録・トラックを手配するための発注管理アプリへの登録・得意先マスタへの顧客登録)
販売商品情報タブでは、商品コードを入力するだけで、商品・在庫マスタアプリから商品名や寸法を自動で入力できます。ここで在庫引当てを行うと「商品・在庫マスタアプリ」「ECサイト」の在庫数も連動して変更されます。手動で行っていたツール間の転記やその他業務の多くがkintoneでは自動化されて、とても便利になりました。
④入出荷予定表アプリ
商品を保管しているセンターと営業とのやり取りに使うアプリです。商品の受け取り方法、引取日の決定、検品報告、出荷準備状況の連絡などを行います。
また、ラック関連の商品は「構成部材の個数計算」が必要で従来は1台あたりの各部材の必要数をマスタ登録し、複数台注文があった際は営業が手計算してセンターへ情報を渡していました。この計算も自動でできるようになりました。
これによってヒューマンエラーによる計算ミスの誤出荷が解決しました。
⑤支払管理アプリ、請求管理アプリ
支払いや請求を管理するアプリです。
⑥マスタアプリ
商品・在庫マスタ、顧客マスタ、センターマスタなどがあります。
Q:新・基幹システムの全体設計に関して感想を教えてください。
丹羽様
開発の前に商魂/商管での業務フローを洗い出したのですが、そのフローには複雑さを感じていました。kintoneによる新・基幹システムは、以前に比べて業務フローがぎゅっと整理されてシンプルになったと思います。
アールスリー浅賀
今回は、パッケージ商品に自分たちが合わせるのではなく、自分たちの都合に合わせてシステムを設計することで、以前よりもシンプルな業務フローにすることができました。
例えば、商魂/商管には見積・売上の2つの画面がありましたが、kintoneでは2つの機能を1つのアプリに集約し、アプリ内でステータス管理する方式にしました。これで次の工程に送る時にデータをコピーできるようになり、利便性が上がりました。
自分で「業務フローの棚卸し」をすることが開発成功の秘訣
Q:今回の開発はとてもスムーズに運びましたが、開発成功の秘訣は何だったのでしょうか?
川咲様
①業務フローの棚卸しをする
1つ目は、自分たちで業務フローを整理したことです。各部門で商魂/商管のどのメニューをどのタイミングで使っているのかを一人一人ヒアリング調査し、それを洗い出して整理し、アウトプットしました。これをしないと開発のお願いができませんし、良い提案もしてもらえません。業務フローを洗い出すことで、視野を広く持って開発に臨めましたし、理想の状態を鮮明に描けました。
②開発の難所について事前に説明を受ける
2つ目は、事前の取り決めの段階でアールスリーが「できること・できないこと」のラインをしっかり引いてくれたことです。できない点を了承しているので、後でぶり返すことなく開発に臨めました。アールスリーはkintoneの基幹システム開発には難しさがあると言いますが、我々が今回の開発は淡々と進んだと感じたのはこのためだと思います。
③kintoneで実現困難な点は会社の利益と照らし合わせて検討する
kintoneではできない点については、その業務と会社の利益とを照らし合わせて検討しました。今回は実施頻度の低い経理業務が問題になったので、経理に我慢してもらったり、新しい業務フローに変更したりしました。
あらゆる業務が1.5倍速で完了する
Q:新・基幹システムの効果を教えてください。
川咲様
作業効率は1.5倍に上がりました。例えば「仮引当てされたが1ヶ月経っても受注にならなかった商品の引当解除作業」というのがありました。商魂/商管の商品マスタで仮引当されている商品を抽出し、1つ1つ目検で仮引当期間をチェックして対象商品のリストを作成し、仮引当している担当者へ連絡していたのですが、今はkintoneのリマインダー機能で仮引当してから1ヶ月経過している商品という条件で、自動通知できるのです。このように、システムで自動化できた事案が数多くあります。社員の業務日報に「kintoneになって◯◯の業務がとても楽になりました!」と書かれていることもあり、そういった声を目にするとやってよかった!と実感します。
丹羽様
私はディーラーさん関係の業務を毎日20〜30タスクほど行うのですが、これまでは2時間必要だったものが今は30分で終わるようになりました。また「ほうれんそう」も改善されました。これまでは関係のありなしに関わらずLINEに大量の業務連絡が届くので、ストレスなうえに必要情報の見落としもありました。kintoneではステータス管理機能により、必要な段階になったら関係者だけに通知が飛ぶので、ヌケモレもストレスも減りました。
業務の土台ができ、攻めの経営が可能になった
Q:新・基幹システムの経営に与える効果があれば教えてください。
川咲様
会社が成長するための土台ができたと感じています。全ての業務がkintoneの中でできるようになり、gusuku Customineをうまく使うことで更に業務効率化を進めることが期待できます。さらに言えば、これまで商魂/商管がネックでできなかった経営戦略や施策も、この土台が出来上がったことで実現できると考えています。
丹羽様
守りを固めることができ、攻めの姿勢に入っていけるようになったと思います。これまでは非効率な内部業務に多くの時間がかかっていたので、売上を上げるために広告を出すことも躊躇していました。広告を出して広くアプローチし問い合わせを増やしたとしても社員がそれに対応できず、レスポンスが遅くなったり、ミスによるクレームが増え、会社の評判を落としかねないからです。今回のリプレースで業務効率が大幅に上がり、1件の問い合わせ対応にかかる時間が圧縮されたことで、問い合わせが増えてもこれまでと同等あるいはそれ以上の品質で対応できるようになったと感じています。
アールスリーは優秀なカーナビであり、燃費の良いガソリン
Q:アールスリーを開発パートナーに選ぶ価値とは何でしたか?
経営をドライブに例えると、アールスリーはとても優秀なカーナビであり、すごく燃費の良いガソリンです。その会社が目指すゴールへの最適ルートを、限られた予算とkintoneを熟知したそのノウハウで導き出し、いわゆるSIerとは異なるアプローチで安価に対応してくれます。ここまではアールスリーがやります、これは御社でやってくださいと、発注側が丸投げのスタイルではありません。
だからこそ冒頭でお話した現在の業務の洗い出しや、こうしたいというあるべきビジョンのアウトプットは私たちがやらないといけないのです。あくまでエンジンは我々ですから。
貴重なお話しをありがとうございました。
取材2023年6月
インタビューを終えて〜アールスリー開発チームより〜
アールスリー浅賀
アールスリーが考えるkintone開発の成功の秘訣は「自分の業務を知れ、kintoneを知れ、シミュレーションしろ」です。システム会社に開発の全てを任せてしまうお客様は多いものですが、ワイドループ様は違いました。自社の業務フローが分かっており、kintoneを理解されていて、アールスリーのことも分かってくださっている。だから今回の開発のシミュレーションができていて、本当は山あり谷ありの開発と感じるような出来事も想定の範囲内であり、うまくいったと感じられたのでしょう。
アールスリー大澤
ご担当者様に業務フローを変える権限がない場合「現在のシステムの機能を、新システムでも同じように使えるようにしたい」「kintoneで再現が難しい点もどうにかしてほしい」というオーダーになりがちです。するとコードをゴリゴリ書いて作り込むことになるので、ノーコード開発や拡張性が売りのkintoneの良さが無くなってしまいます。今回の開発は、川咲様と丹羽様が問題をシステムだけで解決しようとされなかったことが成功のポイントだったと思います。
アールスリー山田、與那城
今回の開発は、1つの取引に対して発注・支払・支払入力など、何階層もあるデータの整合性を保てるようにアプリを設計するのが開発者としての腕の見せ所でした。このあたりはアールスリーがこれまで培った知見をもとに考え開発を行います。安心してお任せください。