公開日:2024-09-03
仲間を増やせたのは、コードを書かなくてもカスタマインがすべて解決してくれたから
セブンセンス税理士法人
総務経理部 ディレクター 金 唯一 様
総務経理部 システム課 アシスタント 見上 陸美 様
セブンセンス税理士法人は、ITによる効率化と、高セキュリティを確保した支援体制、グループ内の税理士、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、宅地建物取引士等のほか、業務提携を行う弁護士等との連携による、ワンストップ・サービスを強みとする士業グループ、セブンセンスグループの中核企業です。現在、スタッフ数は総勢約250名。拠点は東京、千葉、静岡、鳥取、沖縄、北海道など日本全国11か所とシンガポールに展開しています。
紙資料を扱うことが多い士業ですが、セブンセンス税理士法人はkintoneを導入し、業務効率を改善し続けています。その中で、一人情シスに業務が集中し、属人化や後継者の育成といった課題が出てきました。
これらの課題を抱えていたセブンセンス税理士法人がkintoneとgusuku Customine(以下カスタマイン)によりDXを実現し、kintoneを使える仲間を増やした経緯と導入効果について、総務経理部 ディレクター 金唯一氏と総務経理部システム課アシスタント 見上陸美氏にお話を伺いました。
■独学でJavaScriptを書いていたが業務量の増加で追いつかなくなってきた
2015年ごろ、金氏は税務を担当しつつ、兼務でシステム業務も担当していたそうです。しかし、システムに関する相談が増えてきて兼務が難しくなってきたため、会社と相談してシステム業務の専任になりました。その時社内では、顧客管理をExcelで行っており総務部が管理していました。顧客情報の異動届を提出してもらう形で情報を更新していましたが、規模が拡大するにつれて提出漏れが増え、きちんとした情報が集まらなかったそうです。
「税理士業務は個人で完結できてしまう仕事なので、情報が事務所に集まってこない。結果として担当者ひとりで情報を抱え込んでしまうという状況でした」(金氏)
そこで業務を見える化するため、日報を毎日提出してもらうことにしました。Excelで作った日報を、ドキュメント管理ソフトを経由して上長に提出するのです。しかし、上長が見ているのかどうかわからない、誰が出していて誰が出していないのかがわからない、という課題が出てきました。提出された日報もため込むだけで、利活用できていませんでした。
当時の東京オフィスには30人くらいしかいなかったのですが、このままではいけないと金氏は考え、新たなCRMの導入を検討しました。4種類ほどのツールを調査し、まずはkintoneではない他のノーコードサービスを導入したそうです。しかし、思っていた運用ができず、すぐに断念。そこで、候補に挙がっていたkintoneを導入することにしました。
「アプリを作成して、リリースするまでの工程が早くて楽というところが決め手でした。私自身がシステム畑出身ではないので、プログラムをごりごり組むのは現実的ではありません。ノーコードでできるというのは大きかったですね。あとは、Webブラウザ上で動くのも魅力的でした」(金氏)
kintoneを導入し、まずは日報や顧客情報を管理するアプリを開発しました。その後、案件の進捗管理などExcelで扱っていた情報を徐々にkintoneへ移行していったのです。
kintoneの基本機能だけでは対応できないこともあり、その場合は金氏が独学でJavaScriptを書いてカスタマイズしていました。税務との兼務からシステム専任になったものの、その後総務経理部の責任者になり、今度は総務経理部の業務が増えてきました。付きっきりでkintoneを触ることができなくなってきたのです。
東京オフィスの人数が急ピッチで増えるにつれ、kintoneでこんなアプリを作って欲しい、というニーズも高まってきました。金氏以外に誰かkintoneを触れる人を作らなければならない、という課題が出てきたのです。
「とは言え、今後税理士法人あるいは士業グループにシステム畑出身の人が社内SEとして入ってくる望みは薄いだろうと思っていたため、今いる人材を活かすしかないと考えていました」(金氏)
■他の人でもkintoneを運用できるようにカスタマインを導入
自分でJavaScriptを書いている限り、他の人に引き継げないと考えた金氏はプラグインを導入することにしました。複数のプラグインを組み合わせて、やりたいことを実現しようと思ったのです。しかし、結局は欲しい機能が揃わずに、例えば単純に自動採番をする場合でも桁数の設定やハイフンの有無など全てが理想通りのものはなかなかありませんでした。一見要件を満たせそうに見えても、プラグインではかゆいところには手が届きませんでした。
さらに、プラグイン同士の相性もあり、競合することも出てきました。複数のプラグインを有効にすると出てくるべきフィールドが表示されない、などの問題が発生したそうです。
「やりたいことを実現するために、大量のプラグインを調査しました。たぶん100個以上、入れては消してを繰り返したと思います。その中で、カスタマインも知りました。これだったら、何でもできるんだな、凄いなと思いました」(金氏)
そこで2020年11月よりまずは無償のプランでカスタマインの試用を開始しました。ときを同じくして、属人化に課題を感じていた金氏は見上氏に「kintoneを使ってみないか」と声をかけました。
「見上さんは頭の回転が速かったのと、変な言い方になりますが、飽きっぽいところがありました。与えられた課題を言われた通りにひたすら黙々とこなすタイプではなかったんです。同じ作業を2回やったら2回やり方が違うタイプで、毎回ちょっと工夫してみようなどと考えます。このタイプはシステム課なら改善業務などで輝くだろうと考えました」(金氏)
見上氏もシステム畑の人ではありませんが、初めてkintoneとカスタマインに触った結果「面白い」と感じたそうです。
「フィールドを置くだけでアプリが作れて、情報を集められるところに驚きました。JavaScriptとかを見ると自分では扱えないと感じますが、入り口がkintoneだったので、触りやすそう、面白そう、となりました」(見上氏)
金氏に教えを受けたり、カスタマインのチャットサポートを利用したりして、新入社員管理アプリを作り上げました。新入社員のユーザーアカウントを作成したり、写真をもらって社員証作成を依頼したりする業務で使うアプリです。作業項目のチェックが全部入ったら自動で日付を入れたり、ユーザー情報を取得し、作業をした人のフィールドに自動で入れるといったカスタマイズをしています。これらのカスタマイズは入力漏れを無くすとともに、作業負荷を軽減することに寄与しています。
「見上さんが頭の中で考えていることをアプリで実現するということはほぼできるようになりました。ただ、まだ業務フロー設計の経験が浅いため、特殊な時の処理を想定しきれていないことがあるので、そこはチェックしています。やりたいことを伝えれば、見上さんもアプリを組めるということがわかり、カスタマインの有償プランを契約して全面的に導入することになりました」(金氏)
■士業&複数のグループ法人という複雑な仕組みにもカスタマインで対応
最もカスタマインを活用しているのは、請求管理アプリです。顧客への請求を出すところから、入金の消込まで行っています。
顧客によってはグループの複数法人から請求が発生することがありますが、請求はまとめて出さなければなりません。以前は、クラウドの会計サービスを使っていたのですが、インボイス制度が導入されたことで、各社からの請求書に適格事業者番号を付ける必要が出てきました。しかし、その会計サービスは1社分の適格事業者番号しか番号を登録できません。
クラウドの会計サービスはもとより、帳票印刷サービスを含めても、やりたい機能を備えているものは見つからなかったそうです。そこでkintoneアプリを開発することになりました。合計請求書を最初に出し、そのあとに各社からの明細書を付けるのです。とは言え、グループ法人のうち何社から請求があるのかは顧客によって異なります。請け負った業務によっては1社からの請求書が複数枚に渡ることもあります。さらに、税理士法人では報酬の請求以外に印紙などの立替金も発生し、分けて記載する必要があります。この複雑な要件にこたえつつも運用の負荷を軽減させるため、金氏は色々と工夫を凝らしました。
例えば請求管理アプリでは、グループ法人分の請求書を作成しています。各法人毎に参照するテーブルが異なるため、当初は法人数分のExcelテンプレートを用意して請求書PDFを出力する想定でした。しかし、同じようなテンプレートと同じようなカスタマイズを法人数分並べて分岐させるやり方だと一か所修正するだけで法人数分修正作業が発生します。
「そんなことをしていては絶対にミスが起きる」と金氏。そこで、やること「リストから要素を取り出す」を取り入れて法人分処理を繰り返すようにカスタマイズを見直しました。これで、修正する場合は1か所だけで済みます。
またPDF出力用のExcelテンプレートについても、カスタマイズ数を減らす工夫をしています。やること「Excelを出力する」を組み合わせることで「テンプレートを編集するテンプレート」を用意し、法人毎のテンプレートを用意せずとも一つのテンプレートを使いまわす形で対応できるようにしました。
他にも、経理スタッフがこのアプリでボタンをクリックするだけで、仕訳データをCSVとしてダウンロードできるようにしました。kintoneに保存されたデータをそのまま仕訳に使用しようと思うと、1レコードの中に複数の法人があり、売上以外に立替金があるなど複雑です。とは言え、経理スタッフにkintoneでデータを抽出し、CSVでダウンロードして、加工して取り込んで、と指示するのも無理がありました。そのため、金氏はとにかく使う人が混乱しないように、簡単にkintoneアプリを使えるように心がけているそうです。
「ワンクリックで処理できるということを大事にしています。カスタマインで別のアプリにテーブルの内容をレコードとして追加して、どの法人の売上なのか立替金なのかを処理しCSVにして、出てきたファイルを会計ソフトに取り込めるようにしています」(金氏)
従来は会計システムに請求書の内容を手打ちしていましたが、その作業から解放されたそうです。
「kintoneはもとより他の請求書発行サービスを含めても対応できない課題やわがままも、カスタマインがすべて解決してくれました」(金氏)
「カスタマインの導入効果は、システムと関わりがなかった人でもシステム管理者になれるということと、その教育コストの低さですね。もしカスタマインがなかったら、まだ私一人でkintoneを管理していたと思います。また、明らかにカスタマインでなければできないことがたくさんありました。これまでは諦めていたり、あるいは業務フローにしわ寄せが起きていた課題が、カスタマインを使うことによってkintoneで解決できるようになったのも大きなメリットです」(金氏)
金氏にとっては、カスタマインで複雑な要件に対応できただけではなく、見上氏をシステム開発に引き入れられたことも大きな成果でした。一緒に取り組めるメンバーを社内で募ってもなかなか人が集まらないというのはよくある話ですが、これについて金氏は、システム開発経験のない人が自発的に手を挙げることはまずないだろうと考えているそうです。
「自分にスキルセットが備わっているかもわからないなかで、手を挙げるのは怖いと思います。ですが、声をかけてみるとkintoneやカスタマインのようなノーコードツールであればできる人って意外とたくさんいると思うので、まずは一声をかけてみるというのがいいと思っています」(金氏)
実際に金氏が思いつかなかったようなアイデアを見上氏に提案してもらったり、知らなかった情報を共有してくれたこともあり、業務のクオリティが上がったそうです。
見上氏はkintoneを触るようになって3年が経ち、「システム屋さんぽくなってきた」と金氏は評価していました。現在は、社内でkintoneを触るメンバーが隔週で集まり、kintoneやカスタマインの最新情報を交換する勉強会を開催しているそうです。そこではカスタマインの最新情報をお送りするメールマガジン「週刊 gusuku de ゆんたく」も活用し、各自がおもしろいと感じたトピックや新しく試したカスタマイズを持ち寄って発表しあっているそうです。
最後に今後の展望を伺いました。
「お客様に出す文書は現在、他社の帳票出力サービスを使っているのですが、そちらも請求書と同様にカスタマインで出力できるようにしたいと考えています。まだまだカスタマインの仕組みを理解しきれていない部分もありますので、勉強して、自分のできることをどんどん増やし、理想通りのアプリを作りたいです」(見上氏)
「kintoneはデータベースとして使っている側面が大きく、色々なデータを溜め込んでいます。今後はカスタマインを活用して、より詳細な分析に力を入れようと思います。具体的には、今テーブルで持っているデータをレコードに変換して、分析用のアプリで集計をする処理をJob Runnerの定期実行で実現する、といった構想があるので、今後の早い段階で実現したいなと思っています」と金氏は語ってくれました。
取材2024年6月