日清食品ホールディングス株式会社様 事例紹介

公開日:2024-12-23

情報企画部とアールスリーの二人三脚で実現した業務部門のデジタル活用

日清食品ホールディングス株式会社
執行役員 CIO グループ情報責任者 成田 敏博 様
情報企画部 デジタル化推進室 室長 山本 達郎 様
情報企画部 デジタル化推進室 係長 植松 麻子 様
情報企画部 デジタル化推進室 川端 秀平 様

日清食品グループは、即席麺やチルド・冷凍食品、飲料、菓子やシリアル食品等を幅広く製造・販売していることで知られる食品グループ企業です。従業員数は16,509名で、国内外にある多数の事業会社をプロフィットセンターとし、日清食品ホールディングスはプラットフォームとして事業会社の支援を行っています。

2020年、同社ではワークフローシステムの導入を検討し、複数のシステムを比較した結果、kintoneを採用しました。また、kintoneの基本機能では将来的に対応しきれない場面が出てくることを見越して、gusuku Customine(カスタマイン)も導入することで、柔軟に対応できる体制を整えました。

同社は、以前から全社的にデジタル活用を推進しておりました。kintoneの導入当初は、まず情報企画部が中心となって開発や活用を進めましたが、その後、kintoneを活用したいという部門が徐々に増えていったので、現在では情報企画部 デジタル化推進室が各業務部門のデジタル活用を支援しています。

業務部門でkintoneとカスタマインの活用が進み、DXの進展が喜ばしい一方で、支援を担当するデジタル化推進室のリソースは増えることはなく、活用の広がりとともにリソース不足が顕著になりました。そこで、以前からkintoneを使った業務改善やシステム開発の相談を受けるgusuku Boostone(※)を契約していたアールスリーに相談し、アールスリーがヘルプデスク対応を行うことになりました。

ヘルプデスクをアールスリーに依頼した詳しい経緯や効果について、日清食品ホールディングス株式会社 執行役員 CIO グループ情報責任者 成田敏博氏、情報企画部 デジタル化推進室 室長 山本達郎氏、係長 植松麻子氏、川端秀平氏にお話を伺いました。

※kintoneアプリ開発の内製化支援サービスは、現在「キミノマホロ」の「業務改善アシスト」として提供しております。gusuku Boostoneは、カスタマインのプロフェッショナルサポートサービスにリニューアルしました。

「デジタルを武装せよ」ITリテラシー向上への挑戦

2019年1月、経営トップから全社員に「DIZITIZE YOUR ARMS〜デジタルを武装せよ ITリテラシーを高めよう〜」というスローガンが発表されました。これは、「全社員が積極的に自らの業務を見直し、デジタル技術を学び活用していく組織文化の形成、意識改革の必要性」を発信したものです。

2020年にはkintone、カスタマインを導入。選定した成田氏は、その理由について次のように振り返ります。

「当時、紙ベースで稟議を行っており、これをデジタル化して効率的にできないかと考え、ワークフローのサービスを探していました。複数のサービスでデモを作成し、IT部門と総務部門で検討した結果、kintoneが最適だと満場一致で決まりました。kintoneのカスタマイズにおいても、カスタマインならエンジニアでなくても使えると感じ、導入することにしました」(成田氏)

コロナ禍で在宅勤務を進める必要があった同社では、スピーディにkintoneの活用を進める必要があり、アールスリーの内製化支援サービスgusuku Boostone(※)も契約し、活用を広げていきました。

2022年には、全社で強化すべき施策として以下の5つを掲げ、組織的に推進しています。

  1. サイバーセキュリティ
  2. グローバルガバナンス
  3. 業務部門のデジタル活用支援
  4. 先進ネットワーク/モバイルデバイスの活用
  5. データドリブン経営に寄与する基盤整備

山本氏、植松氏、川端氏が所属する情報企画部 デジタル化推進室では、「3.業務部門のデジタル活用支援」の専門組織として、業務部門への推進・開発・教育を担っています。

2024年5月にはNISSIN DIGITAL ACADEMYを開講し、デジタルリテラシー、アプリ活用、システム開発、生成AI、データサイエンス、デザイン思考、プロジェクトマネジメントの7つの領域における講座を3つのレベルに分け、社員の自己研鑽を支援しています。

全社的にデジタル活用が進む中、各業務部門にkintone担当者が所属していますが、そのほとんどが自ら手を挙げた社員です。kintoneアプリ作成や一部カスタマインでカスタマイズを行う社員もいます。

「『DIZITIZE YOUR ARMS〜デジタルを武装せよ ITリテラシーを高めよう〜』というスローガンが発信されてから5年、ITリテラシーを高めたい人やスキルアップしたい社員が業務部門に多くいます。そのため、各業務部門のkintone担当者は自ら手を挙げて担当している社員がほとんどですね」(山本氏)

支援が追いつかない。増え続けるkintoneユーザーに応えるヘルプデスク

業務部門でkintoneの活用が拡大していく一方で、デジタル化推進室で支援をしているのは植松氏と川端氏の2人だけです。現在、同社には約4,200名のkintoneユーザーがおり、そのうち約100名がアプリの開発を行なっています。約100名からの相談に2人で対応していましたが、徐々に対応が間に合わなくなっていきました。

すでに契約していたgusuku Boostoneでは、アールスリーに相談することで、植松氏や川端氏がkintoneやカスタマインの知見を得ることができていました。しかし、内製化支援のためのgusuku Boostoneではアールスリーへの相談可能人数が限られていたため、社内にいる約100名の開発者がアールスリーに直接問い合わせをすることはできませんでした。

そこで、情報企画部でノウハウを蓄積するためにgusuku Boostoneの契約は継続しつつ、各業務部門の開発者がアールスリーに直接問い合わせできるよう、新たにヘルプデスクの契約をアールスリーと締結し、2通りの支援体制を整備することにしました。

「業務部門からの問い合わせが増加する中で、kintone以外にもデジタル化推進室の業務が増えていました。業務負担が限界に達しつつある部署に対して、デジタル化推進室が主導して業務改善を行うプロジェクトや、デジタル活用の推進として生成AIやその他のツールの導入を進めるプロジェクトも立ち上がっています。植松さんを他のプロジェクトにアサインしたくても、業務部門の支援に追われて難しい状況でした。新しい人を増やそうとしても、kintoneの知識がある人を雇うのも、育てるのも時間も手間もかかります。それならば最初からkintoneのプロに相談したら良いのでは?と考え、アールスリーに相談しました」(山本氏)

相談を受けたアールスリーは、キミノマホロ(メニュー:ハ-9)でヘルプデスク対応を行うことにしました。週に数回、決まった時間にアールスリーのメンバーがオンラインで待機し、業務部門の質問に直接回答しています。

業務部門からの質問内容は、定期的なミーティングによってデジタル化推進室とアールスリーで共有することで、その後の対応に活かされています。

小さなアドバイスが大きな成果へ。想像よりもっといいアプリができた!

例えば人事部門でExcel管理していたデータをアプリ化しようとした際に、テーブルにデータを蓄積する方法で作成しようとしていました。

このアプリは20人程度が入力する想定ですが、業務部門のユーザーがアールスリーに相談したところ、「kintoneのテーブルは100行以上登録すると重くなって動作が遅くなるので、その可能性があるなら避けた方がよいのではないか」とアドバイスがあり、無事に運用開始から使いやすいアプリを構築することができました。

「こうしたフィールドの選択の問題は、実際に運用を始めてみないと気が付けないことが多いです。もしアドバイスがないままで進めていたら、運用後に修正が必要になり、大きな時間のロスになっていたと思います。ちょっとしたことですが、本当に感動しましたね」(植松氏)

保存する行数が多い場合はテーブルを避けるのがベターといったフィールドの選択だけでなく、カスタマインの機能について相談したり、利用するプラグインについてアドバイスをもらうことで、より使いやすいアプリを作ることができています。

カスタマインで実現できることを知らないユーザーがプラグインを複数組み合わせて使用することがあり、それによって競合するという問題が発生することもありました。

「以前、プラグイン同士で競合してしまう問題がありましたが、相談することでどのプラグインのどの機能が競合しているのかすぐにわかりました。競合しているプラグインの機能をカスタマインに置き換えることで迅速に解決できて、本当に助かりました。フィールドの選択やプラグイン、カスタマインの選択についてアドバイスをもらえるおかげで、ユーザーは自身が想像していた以上にもっと良いアプリを作ることができていると思います」(川端氏)

業務部門の担当者からの相談がほとんどですが、デジタル化推進室のメンバーも相談することがあります。

他社のメール送信プラグインを使用していた際、テンプレートごとにアプリを作成しなくてはならず、アプリ数が増えてしまうことに頭を悩ませていました。その悩みを相談してみたところ、「その用途ならカスタマインの『SendGridでメールを送信する』を使用したほうがいいのでは」と提案があったので、早速試してみました。

「SendGridのアカウントを作成してAPIを発行して…と使いこなすのが難しい部分がありました。しかし、迷った時には『これで合っていますか?』と質問しながら進めることができたので助かりました。ある程度のITリテラシーがないとスムーズに使えないかもしれませんが、教えてもらえて本当によかったです」(植松氏)

悩んでいた問題が解決しただけでなく、処理速度の面でも以前使用していたプラグインより向上しました。

「1~2件のメール送信であれば、もともとのプラグインでも問題ありませんでしたが、大量のメールを送信する場合にはバラバラと時間差で到着する可能性がありました。その点、SendGridは処理速度が速いので、バラバラと届く心配もなく安心して使えます。アプリ数の悩みを解決しただけでなく、処理速度の向上という、予想以上にいい効果が得られました。今後は業務部門のユーザーにもカスタマインとSendGridを使ったメール送信を勧めていきたいです」(川端氏)

アールスリーのアドバイスを受けて日清食品HD様が開発したメール送信カスタマイズ

デジタル化推進室とヘルプデスクの支援で、全社のデジタル活用を加速

kintoneのプロにすぐに相談しやすい環境があることによって、ユーザーは大きな問題から些細な悩みまで解決できています。

ヘルプデスク対応は週数回、数時間ですが、その時間以上の効果を植松氏は実感しています。

「ヘルプデスクをお願いする前は、ユーザーからのkintoneに関する相談に対応するため、検証や調査に多くの時間を費やしていました。その時間をユーザーに待ってもらうしかなかったのですが、ヘルプデスク対応ではkintoneのプロからスピーディに回答をもらえます。ユーザーは悩みをスピーディに解決できますし、私自身も検証・調査の時間を削減できました」(植松氏)

こうして植松氏の時間を作ることができたため、別のプロジェクトに参画できるようになり、業務負担で限界を迎えていた部署は、植松氏がkintoneで支援を行ったことをはじめ、デジタル化推進室の支援によって業務改善が進んでいます。

「リソース不足の問題を解消でき、無事に植松さんを他のプロジェクトにアサインできています。全社に関わる部署がパンクしかけていたのですが、その部署の効率化も進められました。ヘルプデスクは安心して任せられる方でなければ、結局自分たちで引き取って対応することになってしまうのですが、アールスリーさんなら安心して任せられるので、非常に助かっています」(山本氏)

業務部門の方からチャットで直接アールスリーに問い合わせが可能

アールスリーなら安心して任せられるという理由として、ユーザーへのヒアリングが丁寧だという点が挙げられました。

「ユーザーに『どんなアプリをどう活用したいか』を順序立てて丁寧に聞いてくれているのがわかります。そうすることで、ユーザー自身も頭の中を整理できていると思います。この丁寧なヒアリングは本当にすばらしいですね」(植松氏)

これに対し、アールスリーでヘルプデスク対応を担当する渡邊、與那城は意識していることを振り返りました。

「業務部門の方にヒアリングするときは、少しでも引っかかる点は見逃さないで聞くように心がけています。こちらからすぐに答えを出すのではなく、ユーザーさん自身に考えていただくことで、kintoneやカスタマインに関する知見が溜まっていくと考えています」(アールスリー:渡邊、與那城)

こうしてユーザー一人ひとりのITリテラシーも向上しています。kintoneだけでなくカスタマインも組み合わせることで、より多くの課題を解決できるということが業務部門のユーザーにも広がっていっています。ユーザーがアプリ作成や改善をスピーディにできる環境が整ったことで、全社的に業務改善が着実に進んでいます。

デジタル化推進室とアールスリーがタッグを組んだことで、デジタル化推進室のみならず全社のデジタル活用に大きな進展をもたらしました。

アールスリーとともに課題を解決していく未来

最後に、今後の展望やアールスリーへの期待について伺いました。

「最近、業務部門のユーザーからkintone基本機能の通知に関する悩みが寄せられています。カスタマインを使用したTeamsとの連携についても、ヘルプデスクやBoostoneを通じて情報を得たので、今後はそれに置き換えていくことで通知の悩みを解消できるかもしれません。ヘルプデスクに相談しながら、ユーザーが悩みを解決できたらと考えています」と川端氏。

「kintoneと言えばアールスリー、kintoneで何か困ったらアールスリーに相談するというのが私たちのスタンスです。これから生成AIが進化する中で、kintoneやカスタマインに限らず、生成AIの相談など幅広いかかわり方ができるのではないかと期待しています」(植松氏)

「ヘルプデスクとして社内に入っていただけることは非常にありがたく感じています。情報収集には時間がかかりますが、ヘルプデスク対応で情報提供もいただけるため、非常に価値があり大変助かっています。今後、毎日業務に携わる社員では気づきにくい施策や体制の課題があるかとおもいますので、アールスリーさんの視点から施策や体制を問わず課題に付いた際には『日清さん、それは違いますよ!』と、指摘していただきたいですね。そして、解決策もご提案いただけると嬉しいです。これからもよろしくお願いします」と山本氏に締めていただきました。

貴重なお話をありがとうございました。

取材 2024年10月