公開日:2022-12-19
紙とハンコはもう卒業。請求書作成も承認も、カスタマインで思いどおりの使い勝手に
大塚刷毛製造株式会社 営業本部 マーケティング一部 塗装設備課 飯塚 優志 様
株式会社マルテー大塚 システム部 クラウドソリューション課 石井 健太郎 様
システム部 ネットワーク課 坂田 龍 様
株式会社マルテー大塚は、大塚刷毛製造株式会社を中心とするホールディング会社です。刷毛・ローラーの専門メーカーで、塗装用機器工具や塗装設備、住宅器材なども手がけています。会社の設立は昭和22年ですが、創業は大正3年という老舗です。
以前は、昔ながらの紙とハンコで業務を行っていました。一部デジタル化されていたものの、それでもExcelでの管理に留まっており、効率的なデータの利活用はできていませんでした。そこで、まずはSFA・CRM利用を目的に2013年にkintoneを導入したそうです。
kintone導入により業務のデジタル化は少し進んだのですが、紙のワークフローも一部残ったままでした。しかし、コロナ禍になり、リモートワークに移行しなければなりません。そこでkintoneを活用しようと試みたものの、標準のプロセス管理では難しいことが判明します。マルテー大塚グループでは、その課題をgusuku Customineで解決しました。
今回はgusuku Customineで業務課題を解決した経緯と導入効果について、大塚刷毛製造株式会社 営業本部 マーケティング一部 塗装設備課の飯塚優志氏、株式会社マルテー大塚 システム部 クラウドソリューション課の石井健太郎氏とシステム部 ネットワーク課の坂田龍氏にお伺いしました。
■導入:コロナ禍を機にペーパーレス化してリモートワークに対応
以前の大塚刷毛製造では、営業日報をExcelで管理していました。月ごと、かつ営業担当ごとにシートが分かれており、そのシートに1行で1日分の報告を入力するのです。1つのセルの中に、その日に訪問した客先の情報をすべて書くことになり、単なる行動管理にしかなっていませんでした。
「顧客軸で誰がいつ行って何をしたのかを見られるように、営業日報を保存した段階でCRMにレコードが入るようになればいいよね、と考えてkintoneを導入しました。当初は、SFAとCRMとして使っていました」と石井氏は当時を振り返ってくれました。
石井氏や坂田氏のもと、kintoneの活用が社内で広まっていきます。「日報」アプリが作成され、「顧客」アプリでは関連レコードとして日報の訪問履歴が閲覧できるようになりました。
2013年に導入していたkintoneの活用が更に進んだのは、コロナ禍に入ってからです。マルテー大塚グループでもリモートワークへの移行が進んだのですが、いまだ残っていた紙を扱う業務がボトルネックになったのです。
大塚刷毛製造では、取引先である販売店が、その顧客である塗装業の人たちに刷毛やローラーを販売する際、クレジットカードで支払えるように決済サービスを提供しています。昔はツケ払いで販売していた時代もあったのですが、それでは代金未回収が発生するリスクがあります。クレジットカード決済であれば、お金の回収は確実です。
決済サービスの請求書を発行する際は、毎月、請求内容を書き出した書類と共に請求書を印刷して紙で提出し、石井氏がハンコを押して承認していました。以前はその運用でなんとかなっていたのですが、新入社員が入ったうえ、リモートワークへの移行が必要だったため、これはkintoneでなんとかしたい、と取り組み始めたそうです。
「ほぼ固定化された契約に対して、月額サブスクリプションのように毎月請求書を発行します。その発行予定請求書を作成・登録するための空レコードを自動的に生成したかったのですが、kintoneの基本機能では対応できませんでした」(石井氏)
また、請求書の発行については紙で行っていた業務を踏襲したい部分がありました。ほとんどの顧客は毎月請求なのですが、一部、今月は請求書発行不要となる件があり、それらを除外する作業です。一覧で対象顧客を表示し、請求書発行の要不要を選別する作業をkintoneで実現する必要がありました。
システム部の石井氏は2018年にサイボウズ本社で行われたgusuku Customineの発表イベントに参加し、発売前のプレビュー版から使用していた初期ユーザーでした。
gusuku Customineならノーコードで開発できるので、誰でも利用できそうだと活用することにしたそうです。
■活用:定期実行と複合画面機能でミス低減と属人化の解消をまとめて実現
早速、石井氏はgusuku Customineを使って「請求書」アプリのカスタマイズを行いました。月末で締め、翌月上旬にJob Runner (※)を走らせて、作成済みの発行予定請求書レコードを丸ごとコピーし、当月分請求書作成のための空レコードを追加するようにしたのです。あとは、金額を入れるだけです。
※ Job Runner とは:gusuku Customineの機能の1つで、定期的に処理を実行することができる仕組み
また、請求書発行時の承認作業を、一覧画面で実施したいというニーズがありました。kintone標準のプロセス管理では、レコードの詳細画面で承認して、また次のレコードの詳細画面に移る操作に手間がかかります。1画面に1案件しか表示されないのは使い勝手が悪かったのです。
「今月発行する請求書を一覧で承認したかったのですが、どうすればいいか悩んでいたところ、ちょうどその時に「一覧画面と詳細画面の複合画面を作成する」がgusuku Customineの新機能として追加されたのです。タイミングがばっちりで、これは使える!となりました」(石井氏)
複合画面とは、左側にレコード一覧、右側にレコード詳細画面を組み合わせて表示する機能です。フィールドの背景色を変更するなど、フィールドの見た目を装飾する機能とも組み合わせて利用でき、全体を見つつ詳細をチェックしたいときに活用されています。
kintoneのレコードを見たいなら詳細画面を開けばいい、という方も多いと思いますが、日々使い込んでいる方からは、画面遷移の小さな手間も効率化したいというニーズが出てくるようです。「一覧画面と詳細画面の複合画面を作成する」は、ややイメージしにくい機能ですが、石井氏のニーズにはピタッとはまり、即採用となりました。
kintoneとgusuku Customineで「請求書」アプリを構築することで、漏れやミスがなくなったという効果に加えて、金額にまつわることだけに間違えてはいけない、というプレッシャーから解放されたのも大きなメリットとのことでした。
他にも、メールの文面を生成するためにgusuku Customineを活用しています。備品発送のため、営業所宛にメールを送信する業務が頻繁に発生します。このとき、敬称をつける操作がたびたび発生します。通常、宛名として指定するフィールドには1名の氏名のみが記載されているため問題はないのですが、複数の担当者が登録されているケースがあります。この場合、利用しているkintone連携メールサービスで「様」を付けると、「山田 佐藤様」のように前方の名前に敬称が付きません。そこで、gusuku Customineの「textjoin関数」を使い、前方の名前にも敬称が自動でつくように設定しているそうです。
■活用:見積りから売上まで一貫した情報管理で報告・集計にかかる時間を大幅短縮
一方、塗装設備課では「設備案件」アプリでgusuku Customineを活用しています。元々は、見積書も月次の報告書も通年の報告書も、すべてExcelで作成・管理していたそうです。当然、作業負荷が大きく面倒なうえ、ミスも多かったという課題がありました。そこで、飯塚氏が坂田氏に相談したところ、kintoneで解決できるとアドバイスを受け、まずは見積作成からkintoneアプリ化していきました。
kintoneアプリの開発は坂田氏が担当しました。1年かけて徐々にアプリを改善し、途中で売上も管理することになり、見積作成から「設備案件」アプリへと進化したそうです。
「飯塚から相談を受けたのは2020年3月ごろです。緊急事態宣言が出て、強制的にリモートワークになる中、テスト運用を重ねながら11月にアプリを本格的に使い始めました」(坂田氏)
完成したアプリはフィールドがとても多く、画面が縦に長すぎるため、見やすくして欲しいという現場の声が出てきました。そこでgusuku Customineでタブ化し、その上不要な情報は非表示にするカスタマイズを行いました。
見積書番号や見積書のテーブル行には、gusuku Customineの自動採番機能で連番を入れています。アプリ作成当初は坂田氏がJavaScriptで自動採番の機能を追加していたのですが、現在はgusuku Customineに移行しています。また、テーブルの右には行増減ボタンがありますが、列が多いために画面を右スクロールしないと操作できません。これもgusuku Customineの「行増減ボタンを左端に移動する」という機能を利用し、左側に移動させています。
新たに見積りを行う際、以前使ったレコードを再利用することも多いそうです。その際kintoneの基本機能でレコードを再利用しています。しかし、レコードの再利用では不必要な項目までコピーされてしまうため、gusuku Customineの機能「フィールド値をクリアする」を使い、金額や自動採番、進捗ステータスをクリアしています。
「見積書を作ってしまえば、同一案件の情報を一貫して管理できるのがとても便利です。今まで、私たちから上司への報告が何回も発生していたのですが、基本的にはkintoneを見ればすべて集計できるようになりました。大幅に作業時間を短縮できたのが、大きな導入効果と言えます」(飯塚氏)
見積書や注文書、発注書などの作成も劇的に楽になりました。従来は、内容をExcelにコピー&ペーストして作成していましたが、今では同じレコードでタブを切り替えて出力するだけで、ミスなく作成できるようになりました。
また、営業担当の変更が発生した場合、以前はそれぞれのPCにExcelで様々な情報が保存されていたため、過去の履歴は把握できませんでした。しかし、kintoneアプリ化することで、過去のデータはすべて確認できるようになり、引き継ぎも簡単になり、属人化が解消されました。
■JavaScriptは書かないのが一番、今後はLINE WORKS連携を予定
導入時点で約200からスタートしたkintoneのアカウント数も、現在は約600アカウントに増えた同社。現時点での活用度もかなりのものではありますが、最後に今後の展望について伺いました。
「社内チャットとして利用しているLINE WORKSとgusuku Customineを連携させて、レコードが登録されたら通知するといった活用も進めようとしています。kintoneのスマホアプリを入れていない人がいるため、通知を受け取れないことがあるのです。LINE WORKSは全員がスマホに入れているので見逃さずに済みます」(坂田氏)
「今、電子印鑑の採用をお願いしているところです。現時点では、見積書を紙に印刷して角印を押し、スキャンしてメールを送っていますが、手間がかかります。建設業法でも電子印鑑が使えることがわかったので、スモールスタートということで小中規模の見積書で利用していこうと考えています。その時に、gusuku Customineで承認ボタンを作って、編集ボタンを押さなくても印影を入れられるようにしたいと考えています。中長期的にはペーパーレス化を目指しております」(飯塚氏)
「JavaScriptは書けるけど書かない、ということが一番です。新規のカスタマイズ要件に対してはどんどんgusuku Customineを使ってよいとゴーサインを出しています。属人化が怖いので、何かあったら誰でも対応できるように、みんなにもgusuku Customineのスキルを身につけてもらいたいと思っています。今後は、PDFの一括出力をやりたいですね。毎月、決済の明細を発行しているのですが、いまだに手作業で封筒に入れて発送しています。メールで送信できるよう、PDFを発行するようにしようと考えています」と石井氏は締めてくれました。
貴重なお話をありがとうございました。
取材2022年8月