公開日:2021-10-06
諦めずにチャレンジし続けて廃棄物回収業務をデジタル化! ノーコードカスタマイズで業務効率を大幅に改善
峡南環境サービス 総務部管理課 小川 あかね 様
有限会社峡南環境サービスは一般家庭や企業から出た廃棄物を車両やコンテナを介し回収して、自社処分場や焼却場に運搬及び処分する業務を主に手がけており、別部門では解体工事や土木工事なども請け負っています。創業は昭和61年で、従業員は60人弱です。
業界あるあるですが、峡南環境サービスも紙ベースのアナログで情報を管理、共有していました。廃棄物処理の業務では様々な書類を扱うのですが、その中のひとつである仕分け票(回収してきた廃棄物を自社処分場にて分別した内容を記入するための帳票)を集計する担当が退職することになったのです。
そこで、導入したのにあまり活用されていなかったkintoneで、仕分け票を管理してみようとチャレンジ。その成功を皮切りに、廃棄物処理の業務を次々とkintone化しました。そのほとんどでgusuku Customineによるカスタマイズを行っており、そのアプリ数はなんと44。そして、そのうちの「作業報告」アプリに設定しているカスタマイズはなんと52ページにも渡り、これまで作成した設定は500項目以上にも及びます。
今回は、たった1年でこれだけのkintoneアプリ作成とカスタマイズを行った小川あかね氏にお話を伺うことができました。
課題■仕分け票の集計担当が退職するので担当していた業務をkintone化したい
kintone導入のきっかけは退職金の計算をまかせている社会保険労務士から、そろそろ自分たちの会社で管理した方が良いとアドバイスをもらったからです。それで人事管理ソフトを検討したものの、新システムを入れても人事管理しかできないのではもったいない、汎用性の高いソフトを導入したい、という話になったそうです。
小川氏はそんなタイミングで、サイボウズのパートナー企業が主催するセミナーに参加する機会があり、kintoneに出会いました。kintoneなら自分たちで色々なシステムが作れるのではないか、と考え、導入しました。
結果的にkintoneの標準機能では複雑な計算ができず、退職金の計算はできなかったそうです。結局退職金はExcelで計算することになりました。とは言え、せっかくkintoneを導入したのだからと、小川氏は色々とアプリを作りました。しかし、データの入力をお願いしても入力してもらえません。同僚の皆さんが今抱えている仕事に入力作業が追加されるだけなので、なかなか浸透しませんでした。そのまま、kintoneは放置されることになってしまったのです。
2020年7月ごろ、9月に仕分け票の集計担当が退職することがわかりました。これまでであれば、誰かに業務を引き継ぐのですが、小川氏はkintone化にチャレンジします。
「退職金計算を目的としてkintoneを導入する際、私の中では、将来的には廃棄物の受付から配車・回収・作業報告・請求業務・収益管理までをkintone化したいという想いがありました。そこで、収益管理につながる廃棄物の仕分け票からkintoneに置き換えていくことにしました。アプリが動けば、仕分け票を集計するという業務そのものがなくなるというメリットもあります」(小川氏)
廃棄物を処理する際の業務フローは、まず顧客からコンテナの設置や引上といった依頼をもらい、受付けた人が「付箋」と呼ばれる書類を書きます。排出現場の住所、コンテナのサイズなどを聞いたら、配車担当に連絡します。
スケジュールの管理は事務所の壁一面が一週間のカレンダーになっており、すでに受けている付箋が貼られています。配車担当は壁に貼られた付箋を見ながら、対応可能日を確認してくれます。それを受付けた人が顧客に伝え、付箋に日付を書き込んで壁に貼り付けます。
情報は壁に貼られているので、外出先から配車状況を確認する際は、配車担当に電話するしかありません。当然、配車担当も壁の前に来ないと状況がわからず、とても不便でした。
排出現場の地図は紙ベースで、コンテナ番号ごとに用意されたクリアファイルに入れていました。運転手が翌日に行く場所と現在設置されているコンテナ番号を確認すると、クリアファイルを探し、紙の地図を集めるのですが、この手間がとても負担だったそうです。
この配車業務をkintone化できれば、外出先からも配車を確認できるし、地図もGoogleマップに登録すれば経路検索も簡単です。小川氏は放置されていたkintoneを再稼働させました。
導入■複雑な条件で動作を制御したいのでgusuku Customineを導入
小川氏は仕分け票アプリを作成し、処分場の作業員にはiPadを渡しました。9月1日から、紙に書くのではなく、kintoneに入力してね、と伝えたのです。業務を遂行するためにはkintoneを使わなければならない状況にするというパワープレイです。
もちろん、無理強いしてしまえば、反発が起きてしまいます。そこで小川氏はすべての情報を現場に入力させるのではなく、総務や営業担当が事前に業務の情報を入力するようにしました。処分場では、持ち帰ってきたコンテナを開き、廃棄物を選別して何がどのくらい入っていたのかを入力するだけで済むようにしたのです。
また、紙のマニュアルも作成しました。44ページにもなる大作で、iPadの画面を載せて、細かく操作方法を解説しています。アプリの操作方法だけでなく、タップやスクロールのやり方といったiPadの基本的な操作方法まで紹介しているのです。
この手厚いサポートのおかげで、kintoneが使われるようになりました。仕分け票アプリも活用され、処分場でデータとして入力されるので手書きされた仕分け票を集計表に写すという業務もなくなりました。
「せっかくここまでできたのだから、私の目標としている配車もkintoneで行うことにしました。しかし、付箋をkintone化するには基本機能では足りないこともわかっていました。廃棄物の処理を管理する作業報告書には、いろいろなステータスがあり、その条件に応じて処理も変わります。そのため、条件が複雑すぎて、プロセス管理では対応できないのです。JavaScriptは書けないし、もし私が頑張って習得しても、今後運用して行く人たちも同じように勉強しなければなりません」(小川氏)
そこで小川氏はgusuku Customineを試用してみました。セミナーに参加したときにもらった拡張機能の冊子でgusuku Customineを知ったそうです。YouTubeのアールスリー公式チャンネルなどで、gusuku Customineの使い方を調べるうちに、自分の代わりにJavaScriptを書いてくれるツールだと理解し、「使いたい」と会社に猛アピールして導入することになりました。
主に業務で利用しているのは、「顧客名簿」「現場管理」「コンテナ配車」「作業報告」「仕分けデータ」「処分費収支」の6つのアプリですが、マスタアプリなども含めると、なんと44のアプリでgusuku Customineを活用しています。その中の「作業報告」アプリでもっとも多くのカスタマイズをしており、設定画面は52ページにも渡っています。
「作業報告」には、基本的に「1:計量待ち」「2:選別待ち」「3:要更新」「4:作業報告完了」の4つのフェーズが設定されています。顧客の現場からコンテナを引き上げてきた場合、持ち帰ってから重量を計測するので、まずは計量待ちになります。その際、廃棄物の選別が必要なのであれば、選別待ちにします。コンテナを置いてきただけだったり、選別が不要であれば作業報告完了です。選別を行った時に、廃棄物の内容や量が想定を超えていて、請求内容などを変える必要がある場合などは、要更新のフェーズに設定するといった流れです。
個別のフィールドも制御しています。例えば、「重量」フィールドが空だったり、「車両サイズ」フィールドが「ユニック」以外の場合は「ステータス」フィールドを「計量待ち」に設定します。排出現場ではコンテナの写真を撮影してもらいますが、設置だけであれば設置後のフィールドのみを必須にします。交換であれば、もちろんビフォー/アフターの写真両方を必須にします。このような複雑な条件による設定をgusuku Customineで行っているのです。
産業廃棄物処理業では、産業廃棄物の行き先を管理し、不法投棄を未然防止するためにマニフェスト(電子か紙)と呼ばれる産業廃棄物管理票を、排出事業者が発行する義務があります。電子マニフェストを利用する場合、運用を行っていく中で、回収した廃棄物の内容や数量、運転手名や車両番号を排出事業者に報告を行います。報告を行うための帳票を受渡確認票と呼び、今でもFAXを使うことが多いそうです。その場合は、kintoneから受渡確認票を出力するのですが、顧客ごとに帳票の種類が異なります。出力には「プリントクリエイター」(トヨクモ)という連携サービスを利用しているのですが、レコードの条件によって必要な帳票を選ぶことができません。そこで、gusuku Customineでカスタマイズし、取引先に応じて適切な受渡確認票を出力できるようにしています。
配車の管理には「カレンダーPlus」(ラジカルブリッジ)という連携サービスを利用しています。管理は問題なくできるのですが、訪問先を自由に並べ替えることができません。配車の順番を考える時は、以前のように紙の付箋を机に並べた方が便利なことがわかりました。
そこで「予定印刷」ボタンを用意し、その日の予定をミシン目の入った用紙に印刷できるようにしました。簡単に手で分離でき、その紙を並べて、配車の順番を考えられるようにしました。QRコードも印刷しており、スマホで読み込めばレコードの詳細画面が開きます。
必ずしもペーパーレスにこだわるのではなく、効率がいいのであれば紙に印刷して併用するというフレキシブルな対応が流石です。このおかげで、年齢層が高い人たちも問題なく回収業務を遂行できているそうです。
小川氏はプログラマではありませんが、ものすごく効果的に、そして細かくカスタマイズしています。どうやってそのスキルを身につけたのでしょうか?
「gusuku Customineならなんでも実現できると思っています。もし、うまくいかなくても、絶対にできるはずだと考えて構築しています。私は諦めが悪いので、サポートも活用させていただき、いろんなことを実現できています」(小川氏)
最後に今後の展望について伺いました。
「今回は会社全体のバックアップと従業員の理解・協力のもと、業務効率化に成功することができました。今後は、他の連携サービスに頼っている部分を全部gusuku Customineにしていきたいです。できるだけ、少ない数の連携サービスで完結したいので。業務ではさらに活用範囲を広げたいです。廃棄物の処理業務は会社全体の業務からすると一部なのです。解体工事などの業務も全部kintone化できれば、請求書などのシステムもkintoneにすることができます。その時にも絶対、gusuku Customineが必要なので今後も活用していきたいと思います」と小川氏は締めてくれました。
貴重なお話をありがとうございました。
取材 2021年9月