公開日:2023-07-28
「営業にとっての使いやすさ」に振り切った経費申請アプリで、差し戻しが1%に激減
株式会社ISSリアライズ
本社 総務部 課長 情報技術グループ 西脇 一憲 様
本社 総務部 管理グループ 主幹 大西 良介 様
株式会社ISSリアライズ様は、創業100年を超える加工製品商社で、製品の製造や調達に関するコンサルティングを手掛けておられます。今回「経費精算の申請部分のシステム」を、kintoneとアールスリーの開発で構築されました。「営業担当者がコア業務に集中できる環境をつくる」ことを目的とした驚きのアプリの企画秘話と、開発の伴走者にアールスリーを選択いただいた理由をうかがいました。
kintoneは社内インフラに育ち、アプリの内製化にも成功
Q:2021年のkintone導入時には、アールスリーのサービスをご利用いただきありがとうございました。社内システムの内製化を目指してのkintone導入でしたが、現在の社内へのkintone浸透状況や内製化の取り組みについて教えてください
西脇様
kintoneの利用範囲は、一部のユーザーだけから全社員の約400人に拡大しました。kintoneアプリ作成者はかつては情報技術グループだけでしたが、今では他部署にアプリを作れる社員がどんどん増えています。kintone認定の資格保持者も数名います。利用中のアプリは約200個です。
全社で利用する重要度の高いアプリは承認制としていますが、各部署においてはkintoneの基本機能やプラグインを利用しながら、自部署のアプリを適宜作成しています。
営業担当者の負荷が極めて少ない経費精算システムを作りたい
Q:経費精算システムをkintoneで作ることになった経緯を教えてください
大西様
2020年にSaaSタイプの経費精算システム「楽楽精算」を新しく導入したのですが、主な申請者である営業担当者にとって非常に手間が多いシステムでした。というのも会計規則に則った入力が必要だったので、営業にとっては入力ルールが分かりにくかったのです。そのうえ多くの営業は入力ルールを覚えようとしないので、なかなか正しく記入できません。また単純な入力ミスもします。一度で承認される申請は稀で、1つの申請で2〜3回も差し戻しが発生しました。逆にルールを調べるタイプの人は、わざわざルールを探しに行って時間をかけて申請していました。
例えば、飲食では社員交際費・福利厚生費・交際費・社外交際費などがありますし、お酒の有り無しによっても仕分けが変わります。消費税率も8%か10%かを設定しなければなりません。出張では交通費・宿泊費・手土産・接待交際費などが発生しますが、それぞれ適切な科目を登録する必要があります。これは営業にとって非常にストレスのかかる処理だったのです。
営業は「営業活動」に一番時間を使ってほしい。仕分けで迷ったり、時間がかかったり、差し戻しが発生したり、これらをそもそも無くしたい!そこでもう一度、経費精算フローから見直すことになり、kintoneにするか、全く別の経費精算システムを再導入するかを検討することになりました。楽楽精算の導入からわずか8ヶ月後のことでした。
このプロジェクトには情報技術・管理・財務からチームメンバーが集まり、まずは有名なSaaSの経費精算システムを数種類ほど調査しました。しかし、それらは管理部門と管理者がラクになるようなシステムばかりでした。営業がラクに申請できるシステムは世になかったのです。そこでkintoneで一から作ることにしました。
kintoneで申請し正式入力をプロに外注する、営業都合に振り切ったツールを企画
Q:どのような経費精算システムを企画されたのですか?
大西様
営業が経費申請をkintoneで行い、外注先の会計事務所が申請内容を人力で確認。その後、勘定科目を決めて楽楽精算に法的に正しい形式で入力するという、kintone・SaaS・人力を駆使したスキームです。営業は領収書の写真を撮ってkintoneに登録するだけ、電車移動の場合は乗車駅と降車駅を入力するだけでOKです。
このスキームを作るために「kintoneの申請を確認し、勘定科目を決めて楽楽精算に登録する」という特殊な仕事を受けてくれる会計事務所を探しました。お互い初めての試みだったので手探りでプロジェクトが始まりました。
これまで差し戻しの発生量は相当数ありました。営業とマネージャー間では1申請2〜3回くらいの差し戻しがあり、経理に送った段階でも1割程度ありました。管理部門が営業部門の申請を却下・差戻・修正する件数が月130件以上あり、営業部門が経費申請に使っている時間は約300時間でした。この数字をもとに営業が申請に使っている費用を計算すると、新しい仕組みの運営には、楽楽精算の使用料と会計事務所への外注費を足しても数百万円単位のメリットがあると分かりました。この試算により、kintoneによる経費申請ツールの開発や会計事務所への外注の決裁を得られました。
JavaScriptカスタマイズによる開発の属人化やベンダーへの依存を避けたい
Q:経費精算システムの開発はどのように進めたのですか?
西脇様
新システムの開発を、最初は取引のあるアールスリーに依頼しようとしましたが、納期の都合が合わず他社さんに依頼することになりました。その会社にはカスタマイズは避けて、基本機能での開発をお願いしましたが、途中でいくつかの機能にはどうしてもカスタマイズが必要と分かりました。
JavaScriptカスタマイズによる開発の属人化や、ベンダーへの依存は避けねばなりません。社内で開発するにせよ外注するにせよ、カスタマイズはツールの内製化や事後メンテナンスのことを考えるとルールの中でやる方が良い。そんな当社にとってのルールは、ノーコードでJavaScriptをカスタマイズできる「gusuku Customine」を使うことです。gusuku Customineの枠の中でカスタマイズをしておけば、変更が必要になった時に、引き継いだ担当者がどのような設定になっているのかを確認できるので安心なのです。
また今回の経費申請アプリは重要度が高いので、不具合で停止すると困ります。そのため無料のプラグインなどサポート体制の弱いものは使いにくい事情もあります。こんな時も、gusuku Customineならアールスリーのサポートがあるので安心です。
これらの観点から、他社さんでの開発は始まっていましたが、アールスリーにgusuku Customineを使って作り直してもらうことを選択しました。非常に心の痛む決断でしたが、良いものを作るために必要でした。
アールスリー渡邊
他社開発のシステムを引き継ぐことには難しさがあります。どんなプログラムが書かれているか調べないと、ご要望の開発の可能・不可能を判断できないからです。今回は他社開発のプラグインで実装した機能も含めてgusuku Customineに置き換える内容でした。今回は過去にお取引のあるISSリアライズ様であることや、gusuku Customineに詳しい社員様が「恐らくできるだろう」と当たりをつけてのご依頼だったのですんなりお受けできました。
「営業にとっての使いやすさ」に振り切ったアプリが完成
Q:完成したアプリについて教えてください
大西様
経費申請アプリの種類は5つあります。交通費申請・車両申請・出張費申請・海外出張費申請・飲食関連申請です。
営業がする操作は基本的に「領収書をスマホで撮影し、アプリに添付し、保存ボタンを押す」だけです。電車移動の場合は乗車駅と降車駅を入力するだけでよく、金額は後から会計事務所が最安値を調べて入力します。また駐車場の領収書などが複数たまっている場合は、まとめて撮影し1つの申請としても構いません。会計事務所が目視確認し、楽楽精算に手入力します。
kintoneは「楽楽精算に、法律に則った形で登録するためのメモ」の位置づけなので、営業にとっての登録のしやすさを追求できました。申請内容に不備がある場合は、承認依頼後に営業が自分で申請を取り戻す機能もあります。会計事務所による確認で不備や情報不足を見つけた場合は、社内チャットで会計事務所が営業に直接確認し、その内容をkintoneにメモします。
西脇様
かなり申請者の都合に振り切ったアプリができたと思います。このような「営業のために良すぎるユーザーインターフェース」だと、会計規則に則った入力はできません。だから世の中の会計ツールは、会計規則に則った方に合わせるしかなく、ここに現場の都合との埋めがたい溝があります。今回のスキームは、そんな溝を埋めることができました。
経費申請の差し戻しが、10%以上から1%にまで減少!
Q:経費申請アプリの導入効果を教えてください
大西様
まだ導入直後で、当社も会計事務所も手探りでノウハウを蓄積している段階ですが、シンプルな申請に関しては効果が出ていると感じています。特に飲食の申請がかなり楽になったとの意見があります。社内チャットでの内容確認はありますが、懸案だった差し戻しはほぼ無くなりました。現段階の申請数は1,000件を超えていますが、差し戻しは10件未満です。
西脇様
経費精算をしたいと思う人はいませんが、義務なのでするしかありません。それを今回のアプリで「申請はラフでいいからね。後は管理部が頑張るから」と営業に伝えることができました。今後はアプリで生まれた時間が営業活動に活かされていくでしょう。そして会社には、会計事務所への支払いを差し引いても金銭的なメリットが十分にあります。誰にとってもwin-winな状態を作ることができました。
kintoneとgusuku Customineの枠があることでシステムの内製化が進む
Q:gusuku Customineをカスタマイズの基本方針にしていることに関する効果を教えてください
西脇様
社内ツールをJavaScriptでカスタマイズする場合、社員は独学でコードの書き方を学ぶことになります。すると一人ひとりが違う流派を学ぶような状態になるので、同じ機能を作るにも異なったコードが生まれます。ITエンジニアとしてのリテラシーが揃っていれば回避もできますが、当社には専門人材がいません。収集がつかなくなる懸念を感じました。一方、gusuku Customineを使うことにすると流派が1つに絞られ、ノウハウの基盤ができ、社員同士が共通言語を持つことができます。おかげで多くの社員が開発に携わることができるようになり、開発スピードも上がりました。マニアックで独自路線の開発に行きがちな社員も、gusuku Customineを使うほうがラクなので自発的に枠の中で開発をしてくれます。
現場がほしいアプリを諦める必要がなくなった
Q:アールスリーとの開発の感想を教えてください
西脇様
アールスリーのおかげで情報技術メンバーはプロジェクトリーダー的に動くことができ、本当に良いアプリを作ることができました。通常は企画も開発も両方するので「作るのが大変だから、自分ができる範囲でしかやりたくない」という気持ちが勝ってしまいます。本当に良い企画は作るのが難しいから、無意識に曖昧な企画を立ててしまうのです。ところがプロであるアールスリーが作ってくれるとなったら、意識的なブレーキがかからず、目的を達成するための良い絵を描くことができました。アプリを作るスキルを持っていなくても、日常業務で忙しくしている中でも、躊躇なくアプリ開発に挑めたのはアールスリーとgusuku Customineのおかげです。
大西様
私の本来の所属は営業部です。管理職向けの社内研修の一環で、今は総務部の仕事を体験しています。今回の経費申請プロジェクトの経験は、営業部に戻った時に役立つでしょう。営業を知っているし、こんなアプリがほしいとなった時にアプリの企画を立てることができるからです。コードは書けませんが、アールスリーに依頼してgusuku Customineで開発してもらうことができます。開発人材を社内においておかなくても、情報技術部にリソースがない時でも、予算取りだけで営業にとって本当に役立つアプリを自分で作ることができる。会社を、部署をより良くするアイデアを、私たちはもう諦める必要はないのです。
貴重なお話しをありがとうございました。
取材2023年6月