公開日:2022-11-10
カスタマインをもっと多くのアプリで使いたい!全社を巻き込むために社内プレゼン邁進中
株式会社日阪製作所
技術開発本部 情報システム部 デジタル推進課 係長 佐々江 宏明 様
バルブ事業本部 設計開発部 設計開発一課 半澤 知佳 様
バルブ事業本部 製造部 生産技術課 谷川 純一 様
株式会社日阪製作所は1942年に創業し、ちょうど今年で80周年を迎える老舗企業です。産業機械の製造、販売を手がけており、本社を大阪市北区曾根崎に、製造拠点を東大阪市と東京都青梅市に構え、営業拠点としては東京支店や名古屋支店、北海道営業所など全国に展開しています。また、従業員数は連結で900人超となります。
染色仕上機器をはじめプレート式熱交換器、レトルト調理殺菌装置、ボールバルブなど数々の日本初、世界初となる製品を生み出しており、世界中で使われています。社訓は「誠心(まごころ)」を事業運営の規範として、社是「世界に定着する日阪」を目指しています。
日阪製作所は10年ほど前に中国拠点で営業情報を共有するためにkintoneを導入し、その後、国内のすべての事業部門にkintoneの利用を展開しました。2019年にはユーザーのデータ入力を支援するためにgusuku Customineを導入しました。しかし、しばらくは情報システム部での利用に留まっていたようです。
2020年頃から、バルブ事業本部でkintoneの活用が進む中、kintoneの基本機能では対応できないニーズが出てきました。そこで、すでにgusuku Customineを導入していた情報システム部のアドバイスのもと、バルブ事業本部でもgusuku Customineの活用が始まりました。バルブ事業本部ではバルブの開発、販売を行っています。ちなみに、バルブとは流体を通したり止めたりする機器のことで、例えば水道の蛇口やガス栓もバルブです。
今回は、現場であるバルブ事業本部でgusuku Customineを導入し、kintoneをフル活用することで業務効率を大きく改善した経緯と導入効果について、株式会社日阪製作所 技術開発本部 情報システム部 デジタル推進課 係長 佐々江宏明氏とバルブ事業本部 設計開発部 設計開発一課 半澤知佳氏、バルブ事業本部 製造部 生産技術課 谷川純一氏の3名にお話を伺いました。
■導入:中国との情報共有からはじめたkintoneを全社に展開、gusuku CustomineはUX向上のために導入した
kintoneの導入は10年ほど前に遡ります。当時、中国の拠点での顧客情報を管理し、営業活動に活かしたいという要望が出ました。最初はExcelファイルで管理しようとしたのですが、使ううちにフォーマットは崩れるし、最新のファイルがわからなくなる、という課題が出てきました。
2011年11月にリリースされたばかりのkintoneに関する記事を読んだ佐々江氏は、クラウドサービスなら中国ともシームレスに情報共有できることに気が付きました。中国側に仕組みを置くとメンテナンスが難しくなりますが、kintoneであれば気にする必要がありません。
「当時はウェブ会議も広まっていなかったので、メールや電話でコミュニケーションしていたのですが、部品の形などはなかなか伝わりません。kintoneであればアプリを作って、部品や製品の情報を実際に見てもらい、フィードバックをもらうという仕組みを作ることができます」(佐々江氏)
佐々江氏はkintoneの活用を全社に展開する中で、基本機能で実現できないニーズが出てきたため、何かツールがないかと探し始めました。そんな中、2018年にリリースされたgusuku Customineのセミナーを受け、まさにかゆいところに手が届くツールだと感じ、導入を決めていただきました。
最初はユーザーに迷わずデータを入力してもらうためのサポートに使えそうだ、と興味を持ったそうで、まずは情報システム部内での検証用に4アプリプランを契約しました。その後は一部の部署でkintoneとgusuku Customineを利用していたのですが、実はこの時はあまり活用が広まりませんでした。状況が変わったのはコロナ禍になってからです。
コロナ禍で業務効率の改善が求められるようになり、バルブ事業本部でkintoneをもっと活用していこう、という活動が広がったそうです。そこで、kintoneアプリを作ったのですが、ITに詳しくない人に使ってもらおうとした時に課題が浮かび上がってきたのです。
「バルブ事業本部にも以前からkintoneは導入されていましたが、コロナ禍になってテレワークのメンバーが増えたことで活用が進みました。まずは情報を共有する際にメールや紙での回覧をやめようということになりましたが、kintoneで通常業務をこなすうちに基本機能では物足りなく感じて佐々江さんに相談したところ、gusuku Customineを紹介されました」(半澤氏)
半澤氏は、システムはもちろんマクロのこともわからなかったのですが、アールスリーインスティテュートが開催している無料の講習会や体験会に参加して実際に触ってみると、思っていたことをすんなりと実現できることに気が付いたそうです。
「自分がこうやりたいとずっと考えていたことが割とすぐ反映できて、周りの人からも「助かったわー」という反応が寄せられたのでよかったです。画面上のサポートサイトで色々と記事をたどって調べるうちに、どうにかこうにか実現できるな、というのが第一印象です」(半澤氏)
■活用:現場部門が自分で使い方を調べて小さな改善をたくさん積み上げた
コロナ禍でまずチャレンジしたのは、設計業務でのやりとりをkintone化することでした。例えば、特殊な高圧ガス製品を扱う場合、製造する際にいろいろな資料が必要になることがあります。従来は、営業担当が顧客から資料をもらい、設計担当に送り、設計担当は製作担当に指示をするという流れでした。そのため、大量のメールが飛び交い、資料もどこにあるのかわからないので、他の人が業務を手伝うことができませんでした。そこで、kintoneのレコードに資料を保存することで、手が空いている人が手伝えるようにしたのです。
しかし、kintoneの基本機能では細かい使い勝手が悪く、作業効率が上がりませんでした。例えば日付を入れるのにも数工程が必要ですし、一覧で追加ボタンをクリックするために右スクロールしたりするのも手間でした。また、一覧で納期が近づいているレコードに色を付けて目立たせたかったのですが、それもできません。
「Excelで管理していた時はマクロで列の色付けを行っていましたが、マクロに詳しい人が異動したり退職したらメンテナンスできなくなってしまいます。そのためにkintoneに移行したのですが、今までマクロで実現できていた自動入力ってできないんですか、と要望が寄せられるようになったのです。無理ですと断って、『kintoneってそんなこともできないのか』と相談してくれた方を落胆させてしまうこともありました」(半澤氏)
しかし、gusuku Customineを導入することで、マクロに精通した現場担当者からの要望を少しずつ叶えることができるようになりました。どんどん課題が来るのですが、日々少しずつ解消していけるようになったのです。例えば、ラジオボタンを選択するだけで自動的に日付が入り、テーブルの追加ボタンは左側に配置、条件に合致したレコードは赤く表示するといったカスタマイズができました。
設計業務管理アプリでは膨大なフィールドを配置しているので、kintoneのレコードが縦にとても長くなってしまいます。これまでは力づくでスクロールしていたのですが、とても手間です。そこで、タブでフィールドを切り替えられるようにしたことで、ユーザーは自分に必要なタブを開いて即作業できるようにしました。
半澤氏が産休に入ったときにkintoneを触り始めた谷川氏も、今ではがっつりと活用しています。谷川氏はもともと設計開発部で様々な図面を扱っていました。そこで、kintoneで図面の管理体制を改善することにチャレンジしました。
「図面の更新漏れにより、図面とできあがった品物で差異が出ることがありました。その漏れをなくすために、きちんと記録を残していくことになり、kintoneのプロセス管理機能を活用しました」(谷川氏)
kintoneアプリを作成したところ、画面が見にくいという声が寄せられました。フィールドが多すぎて、確認漏れが発生してしまうというのです。タブで切り替えるのも手だったのですが、谷川氏は別の手法を選びました。
図面を確認する人たちの中には、あまりITに詳しくない人もいるので、本当に見るべき情報だけに絞って表示することにしたのです。フィールドの表示/非表示のカスタマイズを行い、編集画面に移ったら入力すべき項目だけを表示しました。さらに、確認が完了したのに、ステータスを変えていないため、次のフローに進まず業務が止まってしまうこともありました。そこで、レコードを保存したらステータスを自動で更新するカスタマイズもおこなっています。
社員からの評判が良かったのは、添付ファイルの一括ダウンロードの機能とのことでした。設計する際は様々な資料や図面が必要になりますが、新規設計時や設計変更時の経緯を記録するため、kintoneに添付しているそうです。添付ファイルは10個20個にもなるそうで、1つずつクリックしていると面倒ですし、抜けが出てしまう可能性があります。そこで、gusuku Customineの「添付ファイルをまとめてダウンロードする」という機能で一括ダウンロードできるようにすることで、1つのZIPファイルにまとめられるようになりました。
また、情報を入力する際、できるだけデータの形式をそろえるためにkintoneのラベル機能で入力例を記載していたのですが、さらに画面が長くなってしまうという課題がありました。そこで、gusuku Customineの「フィールドに吹き出しを設定する」機能で「?」アイコンを出し、マウスカーソルを合わせることで入力例がポップアップするようにしました。このカスタマイズとフィールドの表示/非表示のカスタマイズを合わせて、画面の長さを54%短縮できたそうです。
「ちょっとした自動入力やボタンの配列とか、小さなカスタマイズをたくさん使っています。kintoneにデータを入力する時間は短い方がいいので、できる限り作業時間を短縮するように工夫しています。今のアプリは課題を解決し続けてきた集大成になっているので、以前と比べると大幅に効率化できています」(半澤氏)
インタビューの際、とても充実したプレゼン資料を見せてもらいながらお話をしていただきました。どこかのイベントで発表するためのスライドかと思ったのですが、実は社内向けの資料でした。
「現在gusuku Customineの契約は10スロットですが、使ってみるととても便利で、1000スロットのプランを契約し、制限なく使いたくなりました。とはいえ、その費用をバルブ事業本部だけで負担するのも難しいので、全社展開していきたいと考えています。そこで、活用事例を紹介するために資料を作りました」と谷川氏からとても嬉しいお言葉をいただきました。
最後に、今後の展望について伺いました。
「今は日々、現場担当者から寄せられる操作感の課題を解消しているところです。最大の目的は、出図業務に時間をかけずに、間違いなく必要な情報だけを流すことです。まだgusuku Customineでできることをすべて把握しているわけではないので、これから勉強してそこを実現していきたいと思います」(半澤氏)
「これから意識したいのは、kintoneに触れる機会が少なく慣れていない人でも、gusuku Customineを活用して直感的に操作できるアプリにしていきたいということです。加えて、gusuku Customineを他の人でもメンテナンスしやすいように、アクションの並べ方などを工夫していきたいです」(谷川氏)
「gusuku Customineを使いこなすためには、情報システム部門が使い方や活用方法をたくさんレクチャーしなければならないと思っていました。しかし、いざ蓋を開けてみると、現場が自分たちで調べてgusuku Customineによる改善をしていけることがわかり、大きな気づきでした。今後は、そのような仕組みを全社に展開して、日阪製作所全体の生産性を上げていきたいです」と佐々江氏は締めてくれました。
取材2022年8月