公開日:2023-09-27
真面目で諦めない粘り強さと、ノーコードサービスでお客さまの役に立つコンサルティングへ
株式会社CCイノベーション
グループ長 大家 智子様
コンサルタント 室崎 八千緒 様
コンサルタント 中出 泰葉 様
システムエンジニア 松原 友輔 様
株式会社CCイノベーション(所在地:石川県金沢市)は、もともと株式会社北國銀行のコンサルティング部門でした。2021年のホールディングス化に伴って、株式会社北國フィナンシャルホールディングスの子会社として設立され、コンサルティングを専門に事業を行っています。
主に経営戦略策定、事務効率化、ICT 活用、人事制度・研修、事業承継・M&A、海外市場調査及び販路開拓などのコンサルティングを行っています。
ICT 活用では、kintone と gusuku Customine(以下、カスタマイン)の利用が拡大しています。その効果について、グループ長 大家 智子氏、コンサルタント 室崎 八千緒氏、コンサルタント 中出 泰葉氏、システムエンジニア 松原 友輔氏の4名に、北國銀行のコンサルティング部門の時代から含めて、お話を伺いました。
「新たな顧客への価値提供」ではじめたコンサルティング
遡ること20年以上前、北國銀行は外部のコンサルティング会社に依頼して、「地元企業が銀行に何を求めているか?」を調査したことがありました。「その結果、融資と預金しか求められていないというショッキングな結果だったようです」と大家氏は話します。
今の事業を継続するだけでは企業として存続することができないという強い危機感から、新たな価値提供として「お客さまの課題を把握し解決していくこと」に取り組んでいく必要があると考えました。
また、金融庁から金融機関に対して、「社会的課題を解決し、新たな付加価値を創造していくこと」が方針として打ち出されました。こうした背景もあり、いち早く融資と預金という伝統的な銀行業のみのビジネスから、新たなビジネスにチャレンジしようと決断しました。
北國銀行ではさらなる付加価値の提供のため、また銀行が生き残るための新たな事業の柱としてコンサルティング事業を開始しました。従来から取引先企業の経営をサポートしていくためのコンサルティングは行っていましたが、融資や預金を目的とせずに単体のビジネスとして、有償でのコンサルティングを始めたのは、2015年のことでした。
kintone が可能にした、顧客特有の課題の ICT による解決
北國銀行では、国内初のパブリッククラウドでのフルバンキングシステムを稼働させるなど、金融機関としていち早く ICT に取り組んでいました。こうしたシステム投資によって生まれた経営資源を人材育成などに投資し、社内の変革を進めました。そして、社内の変革で得た知見をお客さまに還元したいという思いから、コンサルティング業務においても ICT の分野に積極的に取り組みました。
自社導入でペーパーレス化、業務効率化に成功したグループウェアを中心に、顧客の抱える課題解決に ICT の力をフル活用していったのです。
コンサルティング事業において初めて kintone を活用したのは、事例としても公開されている2018年の山中漆器産地での導入です。
山中漆器産地では、漆器事業者だけでなく素地屋、塗師屋、蒔絵屋等の事業者で分業して生産されています。
課題は大きく3つ、①職人の高齢化・後継者不足による生産力の低下、②受発注業務等のアナログな運用、③漆器産地特有の分業制による、各工程の進捗状況のわかりにくさ、などがありました。
こうした課題を解決するためには、それまで活用してきたグループウェアの機能のみでは、要件を満たすことが難しかったのです。そんなとき、付き合いのあったベンダーに紹介を受けていた kintone のことを思い出し、kintone を活用すれば要件を満たせるのではないかと考えました。
山中漆器産地の kintone 導入では、ヒアリングや要件定義は北國銀行 コンサルティング部門(現:CC イノベーション)が行い、カスタマイズは kintone の紹介を受けたベンダーが中心となって進めていきました。kintone では、各事業者の「受発注業務を一元化し工程の見える化」をし、「支払・請求処理の効率化をサポート」するシステムを作成しました。
kintone の導入によって、山中漆器産地の業務は効率化されました。パンク寸前だった生産現場に時間が生まれ、生産性の向上を達成したのです。
山中漆器産地での業務改善の成功を受けて、これが地域金融機関としてのあるべき姿と考え、北國銀行のコンサルティング事業で kintone を活用していくこととなったのです。
スピードと品質を維持して顧客の期待に応えられるカスタマイン
地元企業の業務改善に kintone が有用であると感じて、kintone を活用したコンサルティングを進めた北國銀行。同社にコンサルティングを依頼する顧客は、kintone の基本機能では足りない複雑なものを求めることが多いそうです。基本機能では要件が満たせない場合には、カスタマイズをベンダーに委託して対応していました。複雑な要件を求める顧客が多くを占めることに関して、「お客さまの IT リテラシーが向上している面もあると思います」と大家氏は話します。
お客さまへの提案だけでなく、自社でも kintone を導入し、効果を実感した北國銀行は、次々と地元企業の課題を kintone で解決していきました。しかし、求められる要件が日に日に複雑になり、お客さまの期待に応えることの難しさを感じていました。
転機は2021年のある案件でした。システム選定前からコンサルティングを行い、kintone の導入を決定しました。その際の要望が、「外部委託でのプログラム開発はしたくない。100%ノーコードで作成し、内製化できるように支援してほしい」といった案件でした。
大家氏は以前、 kintone の提供元であるサイボウズ株式会社より「ノーコードで kintone をカスタマイズしたいなら、カスタマインが最適」と紹介を受けていました。
「カスタマインがあればノーコードで複雑な要件にも対応できる」と感じていた大家氏は、この案件の「100%ノーコードで作りたい」という要望に応えるにはカスタマインが良いと考え、kintone の導入と併せてカスタマインを提案、活用していきました。
実案件を経て、カスタマインを活用することで複雑な要件にも対応できるようになった北國銀行では、その後も様々な案件を kintone とカスタマインで成功させていったのです。
顧客満足度を維持し信頼を勝ち取るためには欠かせないカスタマイン
CCイノベーションの取引先の多くは、北陸地域の中小企業です。中小企業にとって、最小プランで年間 216,000円(年額4) のカスタマインは、決して気軽に投資できる金額ではありません。しかし、現実にはCCイノベーションが手掛けた多くのお客さまが kintone 導入と合わせてカスタマインの導入を決めています。
理由として、まずお客さまのニーズが多様化していることが挙げられます。さらに、提案時には「基本機能のみ」のアプリと「カスタマイズあり」のアプリ、両方のサンプルをお客さまに提示しています。「サンプルを見て、こういうことができるなら必要だと判断されることが多いですね」と大家氏は話します。
CCイノベーションがカスタマインを活用するのは、銀行グループの企業ならではの理由もあります。カスタマイン以外のカスタマイズ方法として外部に委託してコードを書く他、プラグインを入れるといった方法が挙げられます。しかし、コードを書いての開発は高価であったり、スピード感が足りない場合がありました。
また、安価なプラグインを活用するという選択肢もありますが、メンテナンスが行われず、使用していくうちに動作しなくなるリスクがあります。さらにサポートが提供されない場合や、サポート範囲が限られていることもあるため、お客さまに提案するツールとしては、不安がありました。
どんなに納品段階でお客さまにリスクを説明しても、しばらく使って動作しなくなってしまうと、お客さまの満足度は低下してしまうのです。
銀行は地元からの信頼が求められるため、お客さまの満足度を維持することはとても重要なポイントです。
カスタマインを使用した kintone 開発のスピード感、サービスの安定性やサポート体制は、銀行の信頼を維持することにも一翼を担っているのです。
カスタマイズの標準化で担当者に依存しない体制へ
CCイノベーションでは、お客さまと対話しながら自分たちの手でシステムを作りたいと考えており、そのためのツールとして、kintone とカスタマインの組み合わせが最適だと考えています。
パッケージ製品では多様化したお客さまの要件に応えることが困難です。また、プログラム開発を中心としたシステム導入では、課題の把握から実装までに時間がかかるため、ビジネスに合わせて変化する要件に対応できません。
kintone とカスタマインという武器を手に入れたことで、多様化したお客さまの要件に、スピード感を持って対応できるようになったのです。
現在同社では100人を超えるメンバーがコンサルティングを行い、事業は日々拡大していて、北陸以外の地域にも支店が増えていっています。メンバーが増えても、システム開発を高いレベルで提供できるよう、同社の kintone 開発チームのメンバーは、配属されると最初に kintone の認定資格を取得しています。その後、カスタマインを習得し案件を担当していきます。
カスタマインでのカスタマイズは、要件に合わせて案件ごとに作成しているため、出来上がるシステムは担当者のスキルに依存してしまいます。
今後、業務別などでカスタマイズを標準化していくことで、担当者のスキルに依存しないカスタマイズを提供していきたいと考えています。
「標準化することで品質とスピードを担保して、お客さまからの信頼を守っていきたいですね」と松原氏は話します。
銀行の窓口担当者もスムーズにプロのkintone開発者に
ここからはもともと銀行で窓口業務を行っていた、IT 知識やエンジニア経験のない銀行員が、kintone とカスタマインを使いこなすまでのお話について伺いました。
北國フィナンシャルホールディングスグループではキャリア自律していこうという考え方があり、CCイノベーション設立時の立候補者や、選抜された様々なメンバーが、kintone の開発を行っています。今回お話を伺った kintone の開発を行っているメンバーの中でも、大家氏、松原氏はエンジニアの経験がありますが、室崎氏、中出氏は銀行の窓口業務から同社に配属になっています。
配属になった際のことを「実は kintone というもの自体を知らなかったんです。でも kintone に触ってみたら開発は意外と苦労しませんでした」と室崎氏は振り返ります。
企業の社長や役員クラスとのやりとりが重要になる法人向けのコンサルティング自体に苦戦しましたが、窓口業務で培ったコミュニケーション能力で乗り越えました。見つかった課題を kintone で解決していく点は、思っていたよりハードルは高くなかったそうです。
また、kintone やカスタマイズの学習に関しては、まず kintone 認定資格を取得し、さらに kintone hive に参加したり、サイボウズ社が行っている勉強会を活用しました。
「CCイノベーション設立時に配属された一期生なので、手探りで勉強してもらいましたね」と大家氏は振り返りました。
kintone とカスタマインを始めて2年、kintone の連携サービスの中でも比較的多機能であるカスタマインを、なぜ習得できたのか伺ったところ「案件を成功させるために必死でした。サポートサイトでひたすら調べて、体で覚えるような感じでやっていましたね」と中出氏は話します。
案件成功のため、諦めないで粘り強く真面目に kintone とカスタマインに向き合ったことで、短期間での習得につながっていったのです。
「全社員が共通でお客さまの役に立ちたいという強い思いを持っています。目の前の課題をなんとか解決したいという本来の真面目さが、未経験の業務での活躍につながったんだと思います」と大家氏は振り返りました。
窓口で培ったコミュニケーション能力と、本来持っている真面目で諦めない粘り強さに加えて、kintone とカスタマインという新たな武器を使いこなすことで、同社は地元の企業を中心にさらなる付加価値を提供していきます。
社員一人ひとりが「地域の価値創造に貢献できる社員(人材)=プロフェッショナル人材」を目指し、日々スキルアップに取り組んでいます。
取材日:2023年8月