公開日:2021-10-12
gusuku Customine によって現場の業務を変えずに、使い勝手の良いシステムを構築
株式会社エースパック 桑島 逸平 様
食品トレーなどプラスチックパッケージの企画・開発・製造を手掛けるエースパック様に、gusuku Customine(JavaScript不要でサイボウズ社のkintoneをカスタマイズできるツール)導入の経緯と活用効果をうかがいました。
【課題】現場が使いやすいシステムを構築したい
エースパックではパッケージの品目ごとに「品質指示書」と「包装指示書」を作成し、工場では同指示書を参照しながら製造を行います。以前の指示書はExcelで作ったものを工場のラインに貼って使用していましたが、大量の紙書類に囲まれる、データの入力の手間が多い、指示書が統一されていない、最新の指示書がどれか分からない、変更履歴が分かりづらいなどの問題がありました。そこで Excel による指示書の管理からデータベース管理に変更しようと思い目をつけたのがkintoneでした。
しかしながら新しいシステムを入れても、コンピューターに慣れていない現場の方が気持ちよく使えるものでなければ、放置されたり前の方法に戻ったりしてしまうものです。そのため同社では「現場が使いやすいユーザーインターフェース」を作ることで「実際に現場で活用されるシステム」にすることを目指しました。これを実現するにはkintoneの基本機能ではできないカスタマイズが沢山必要でしたが、桑島氏はJavaScriptの経験が無かったためkintoneの導入に踏み出せずにいました。
【導入の決め手】やりたいことを短時間で徹底的にできる
桑島氏はgusuku Customineのことをサイボウズ社のホームページで知り「これがあればkintoneでやりたいことを徹底的に短時間でできる!」と感じたそうです。カスタマイズはプラグインで行うこともできますが「もう少しここがこうできたら…」という時に細かい変更ができません。そんな場合でもgusuku Customineなら細部までやりたいようにできます。桑島氏は「gusuku Customineがあったおかげでkintoneの導入を決めることができた」のでした。
【導入】指示書データベースアプリを構築
桑島氏がkintoneで作ったのは「指示書のデータベースシステム」でした。このシステム内には「指示書アプリ」と「商品データベースアプリ」があり、以下のような機能を持っています。
- 指示書データの作成
- 指示書のステータス管理
- 現場に掲示したいレイアウトでPDF出力
- 現場からタッチモニターで指示書を閲覧
- 指示書・商品データベースアプリの相互連携
桑島氏が特にこだわったのは指示書の使用方法です。通常、生産現場で kintone を導入する場合にはタブレットなどでの利用をイメージしがちですが、本件は違います。生産現場の担当者は kintone の画面を直接見ているのではなく、「kintone から 出力されたPDFファイルをタッチモニターに表示させたもの」を見ています。
kintone の画面をそのまま操作・閲覧するとなると IT に不慣れた担当者は戸惑いもありますが、PDF で閲覧することで従来の紙のレイアウトで指示書を確認できるため現場の使い勝手は殆ど変わりません。このように現場での使い勝手は変えずに、バックエンドの仕組みだけをデータベース化したのです。
【カスタマイズ】正しいプロセスで指示書を作成できる仕組みが完成
先に触れたとおり、生産現場の担当者は kintone の画面を直接使用・閲覧することなく、PDF 出力された指示書を閲覧するのみです。そのため、kintone を使用するのは主に指示書を作成する人(生産現場の管理者にあたる人)です。その指示書作成者が効率的に、それでいてミスの無いように業務が進められるようにするために gusuku Customine を使用しています。
ここからはgusuku Customineで行ったカスタマイズを紹介します。
- ステータスに応じて編集できるフィールドを制御
作成された指示書はkintoneのプロセス管理機能を使って上長に回覧され、承認を得てから工場で利用されます。この際、誤操作を防ぐためにステータスごとに編集可能なフィールドをgusuku Customineで制御しています。例えば、必須項目を設けたり、承認済みのレコードは入力フィールドを無効にして改変できないようにしています。また未承認の指示書が誤ってPDFファイル化(現場に掲示できる状態)されないように、承認済みステータスの場合だけ「帳票出力」ボタンが表示されるようにしました。これらのカスタマイズにより、アプリを使うだけで正しいプロセスに沿って指示書を作成できるようになりました。
- 版番号のカウントアップ
承認後に作成済みの指示書データを編集すべきケースがあります。1品目1レコードの状態を保つために「改版」をしてからステータスを作成中に戻し、版番号を上げて再び作成中から承認までワークフローを回せるようにしました。この版番号のカウントアップを自動的に漏れなく行う機能をgusuku Customineで実装しました。
- 複数の指示書を一覧画面から一括処理
複数の指示書を上長に回したい場合、標準機能だと1レコードずつ詳細画面から処理する必要があります。これでは大変なので一覧画面から一括処理できるようにしました。gusuku Customineで一括処理用のボタンを一覧画面に表示させ、選んだチェックボックスと連動して処理が走るようにカスタマイズしました。
- ルックアップ元のアプリを更新する
入力補助の目的で基幹システムからデータ取得した「商品データベースアプリ」のデータを「品質指示書アプリ」でルックアップできるようにしています。基本的には「商品データベースアプリ」の情報が正しいのですが、稀に生産現場で使用している情報の方が正しいケースがあるため、その場合にはルックアップで取得した情報を元に「品質指示書アプリ」に登録する際に最新に書き換えています。
ルックアップの機能では、「商品データベースアプリ」から「品質指示書アプリ」へのコピーしか実現できないため、gusuku Customine によるカスタマイズで「品質指示書アプリ」に入力された最新の情報を「商品データベースアプリ」に更新する処理を入れています。これにより商品データを引用できるので入力が簡単になり、入力値のばらつきも起こりませんし、商品データも最新の状態を保てるようになりました。
- 関連レコードをカウントし一覧画面に表示させる
品目に紐付いた過去のクレーム・品質異常の件数をカウントしてレコードの一覧画面に表示させています。このカスタマイズのおかげでこれから作成する指示書の注意点を簡単に把握できるようになりました。
- 検索窓と製品名による絞込み機能の実装
現在登録している品目が3,000以上と非常に多いため、指示書作成者の方が目的の指示書を見つけやすいように、品目コードで検索するか、製品名で指示書を絞り込めるようにカスタマイズしました。
【効果】工場現場で実際に使ってもらえるシステムが完成
桑島氏はgusuku Customineでkintoneの基本機能ではできない「操作性を良くするためのカスタマイズ」を多数行いました。これにより指示書を作成する方、承認者、製造ラインで指示書を閲覧する方と、どの利用者にも実際に使ってもらえるシステムを作ることができました。
「現場でリアルに活用されるシステムを目指してkintoneとgusuku Customineをセットで導入したので本当に良かったです。」と桑島氏は感想を教えてくれました。
余談ですが、エースパックではgusuku Deploit(アプリの開発環境の提供・バージョン管理ができるkintone開発者のためのサービス)も利用しています。同社の工場がほぼ24時間稼働しているため開発環境が必要でした。また桑島氏は一人で開発を担っているため、バージョン管理やバックアップをシステム的にカバーできることも重要でした。これらの解決のためにgusuku Deploitを導入したのでした。「切り戻しができるのとできないのでは大きな差があります。安心して複雑なカスタマイズに取り組めるのはgusuku Deploitがあるおかげです。」と桑島氏は効果を教えてくれました。
【今後の展望】生産性を上げて品質にも労働環境にも貢献したい
エースパックではまだまだデータベースが活用されていない業務が多いため、今回の指示書のデータベース化をきっかけに、データベースを軸にした効率の良い業務体制を広げていこうと意気込んでいます。桑島氏は効率化によって品質や労働環境をも底上げしようとする時に、kintone・gusuku Customine・gusuku Deploitがあるおかげで、非常に早いサイクルでこの体制を育てていけると感じているのだと語ってくれました。
最後に、gusuku Customineを検討中の方に桑島氏からメッセージをいただいたので紹介します。
「gusuku Customineがあればkintoneでやりたいことを実現できるのでユーザーさんに使ってもらえるシステムを作れます。毎月のように新機能が追加されるのでどんどん夢が広がります。コストパフォーマンスが非常に高いので、私はマストで入れた方がいいと思っています。」
貴重なお話をありがとうございました。