アイドルオタクのためのシステム開発 vol.1

公開日:2025-01-31

はじめに

皆さんこんにちは、自称「kintone に一番詳しいアイドルオタク」築山です。

2年前に「アイドル事務所のための kintone 開発」と題して、アイドル事務所での kintone 活用を広げるべく連載ブログを書いていました。

残念ながら、その後アイドル事務所で kintone を導入したという話は聞いたことがなく、自分自身の力不足を実感しております。(導入されているかもしれませんが、うちの推しは kintone は知りませんでした)

アイドル事務所への kintone 普及を諦めたわけではないのですが、今度はアプローチを変えて「アイドルオタク」が欲しがるシステム開発について考えてみたいと思います。

アイドルオタクって忙しい

皆さんご存じないかもしれませんが、アイドルオタクってめちゃくちゃ忙しいんです。2024年の活動実績ですが、いわゆるライブ・コンサートだけでも 65日111公演もあります。(私が推しているアンジュルムというグループの場合)

2024年 アンジュルムのライブ実績

またライブとは別に、CD がリリースされたら販促を目的としたイベントが多数開催されます。代表的なものとして以下があります。

  • リリースイベント(通称:リリイベ):ショッピングモールなどで開催するミニライブ(平日午後開催)
  • 個別イベント(通称:個別):チェキ撮影、サイン、トークなど、CD 購入による特典会(休日開催)
  • オンラインお話会:Web 会議のようなアプリでメンバーとお話できるイベント(平日夕方~夜開催)
  • インターネットサイン会:オンラインで名前を読み上げながらサインをしてくれるイベント(平日夜開催)

CD リリース時にはこれらのイベントが集中的に行われます。また、それぞれのイベントごとに「申込み開始日」「申込み週締切日」が異なるケースが殆どです。

その結果、CD リリース月とツアーの時期が重なるとだいたいカレンダーがこうなります。

2024年11月 築山のカレンダー(仕事以外)

実はこれ、2024年11月のスケジュールなので Cybozu Days の時期と思いっきり重なっています。会社・界隈全体で準備・当日・後日フォローなどで「忙しい!忙しい!」と言ってる中、自分は更に過酷なスケジュールをこなしていました。

ちなみに、こちらのセミナーの日は武道館公演と重なっていて、物販終了後から公演開始までの時間で、セミナー講演してましたw

グッズ購入の合間に登壇したセミナー

グッズの管理も大変!

オタクのスケジュールが大変なのはおわかりいただけたかと思いますが、それだけではありません。もう一つの悩みのタネがランダムグッズです。

アイドルのグッズは「この子のグッズが欲しい!」と名指しして買うことのできるグッズと、グループ内の誰が出るかわからないコレクション商品(いわゆるランダムのグッズ)と呼ばれるものがあります。

ランダム商品の一つ 「コレクション生写真」(イメージ)

私が現在推しているアンジュルムというグループは9人のメンバーが在籍しているため、ランダムのグッズを購入した場合、推しのメンバーが出る確率は 1/9 です。

そのため、多くのオタクたちはある程度の数は自分で買うものの、好きなメンバーの被っていないオタクを見つけて交換を募ります。

グッズはコンサート会場などリアル会場で購入するグッズだけではありません。「モバガチャ」というオンラインでガチャを回して、後日商品が届くものもあります。コレクション商品はツアーごと、モバガチャはだいたい月に1回発売されるため、オタクたちは常にグッズの交換に追われています。

交換の流れは以下のイメージです。

  1. グッズ発売前の公式からの告知で、好きなメンバーのグッズ数量を推測する
    ※写真やポスターだとメンバー1人だけのモノもあれば、複数人のものもあるためこの時点では「好きなメンバーのグッズをコンプするためには何種類必要なのか?」は正確には把握できない
  2. ランダムグッズを購入する
  3. 購入したグッズを開封する
  4. 周りで購入している人や X での投稿を見て、ランダムグッズの全体像を把握する
    ※この時点で好きなメンバーをコンプするためにはどのグッズが足りないかを把握できる
  5. 周りにいる人で交換してくれる人を探し、見つかったら交換する
  6. X で交換を募り、見つかったら会場近くで待ち合わせて交換する
X で交換を募る
  1. 当日、会場で交換相手が見つからなかったときは引き続き X で交換先を探す
  2. 交換相手が見つかったら、郵送で交換する。もしくは、交換相手とタイミングの合うイベントがあればその際に交換する

更に、なかなか交換相手が決まらないグッズは長期間保存することとなります。発売から半年ぐらい経ってから交換が決まることもあるため、それまでの期間適切に保管しておく必要があります。

…というように、グッズ購入・交換という行為においても多くのタスクが発生します。

推しとの思い出を残したい

スケジュール管理のところで記載したように、年間65日のコンサートに加えて CD リリースに伴うイベントが多数発生します。

しかし、現状それらの思い出はスマートフォンの写真アプリを見て遡ることしかできません。もちろん、大切な思い出は胸に刻まれて入るものの、たまに振り返ってみたいことがあります。

また、推しとのトークイベントについては「その日推しとどんな会話をしたか?」を記録するためのスマートフォンアプリがいくつか存在しています。ただ、基本的には個人の開発者が創られたものであるため、そのアプリがいつまで存続しているかの保証がありません。

トーク履歴を管理するアプリ(イメージ)

「推し活は減価償却」ともいわれるように、推しに会うことによって得られる効用はその日だけのものではありません。これを時間が経った後も振り返れるようになると、更に推し活の幸福度が増すと思います。

課題解決へのロードマップ

では、アイドルオタクが困っていることについてざっとご理解いただいたところで、これらの業務課題をどうしたら解決できるか考えてみましょう。

課題1:スケジュール管理が大変

解決1:スケジュールを一元管理する
    CD リリースに関しては実施されるイベントがある程度定型化されているので、
    雛形を作ればスケジュールが決まったときの入力ももっと楽になりそう

課題2:グッズの交換・管理が大変

解決2:交換対象グッズを一覧化する。
     交換相手の情報、交換タイミング、交換相手の連絡先などを管理する。
     長期間保管しているものは保管場所も管理できるようにする。

課題3:推しとの思い出を残したい

解決3:ライブなどで外に出たときの思い出を記録する
    トークイベントの履歴を安心できる場所に記録する

さて、課題と解決の方針が決まりました。アプリ開発に着手したいところなのですが、ちょっと立ち止まって考えてみましょう。これらをすべてまとめて解決するのはなかなか大変そうです。そして、kintone だけでは解決できないこともありそうです。

そこで、kintone SINGPOST の「1-07 システム化のコンセプト」や「『システム化のコンセプト』をベースにしたロードマップ作成」を参考にしてコンセプトやロードマップを作成してみます。

色々考えましたが、システム化のコンセプトは「可処分時間の増加」にしました。いま代替手段(スマートフォンアプリなど)があるものは優先度を下げ、まずは自分の時間をより有効に使えることを第一優先とします。これによってプロジェクト全体の進行速度も加速することを期待しています。

では、それを踏まえてロードマップを作成してみますとこんな感じになります。

No概要アイドルオタクのための kintone アプリ
1対象業務の現在位置。できていること、できていないことを整理する①スケジュール管理に手間がかかる②グッズの交換・管理に手間がかかる③推しとの思い出を残したい
2対象業務の理想状態。対象業務の規模に応じて3年〜5年後の状態を設定する。①スケジュールがひと目でわかり、漏れがなくなる②グッズの交換を迅速・効率的に行える③推しとの思い出をいつでも簡単に振り返ることができる
3システム化のコンセプトで定義されたコンセプト。可処分時間の増加
4継続的な業務改善における中間目標地点。全ての中間目標地点はシステム化のコンセプトに沿っている必要がある。スケジュール管理の効率化↓グッズ交換の効率化↓推しとの思い出を残す仕組み化
5マイルストーンを実現する時期。スケジュール管理の効率化は次の新曲(6月頃想定)がリリースされるまでに終える
「システム化のコンセプト」をベースにしたロードマップ

さて、前置きがとても長くなってしまいましたが、これらの課題・解決策を踏まえて次回以降 kintone アプリの開発に入っていきたいと思います。

投稿者プロフィール

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築山 春木
gusuku シリーズのエンドユーザー様への提案・パートナー様への支援をメインに活動しています