ノーコードは開発者を殺すか?

公開日:2020-08-12

こんにちは、金春です。

ここ最近急に「ノーコード」という言葉の認知が進んだように思います。Googleトレンドをみてもその傾向がみられます。

「nocode」という単語のトレンドをみるとこの2ヶ月くらいで急上昇しています。ノーコードに関わる人間としてうれしい反面、ノーコードに対する誤解のようなものも見受けられるようになってきています。

自己矛盾のようなものとの戦い

前回の記事で20年となったことをお知らせした弊社ですが、弊社は元々システム開発を受託して開発する会社です。それは今も継続していますし、弊社の重要な事業の1つです。

さらに弊社はkintoneのカスタマイズをノーコードで実現するgusuku Customineも提供しています。

gusuku Customineを使うと、それまでエンジニアがJavaScriptでプログラムを書いて行っていたようなカスタマイズが簡単に誰でもできるようになります。

つまり、これは受託開発のビジネスを殺しかねないということになります。誰でも簡単にカスタマイズできるようになってしまうと我々の受託の仕事もなくなってしまいますからね。

ノーコード vs コード

私は、最近は会社での役割の関係でコードを書かなくなりましたが本来的にエンジニアです。プログラムを書くのは好きですし、小5からやってきたような人間です。

エンジニアの立場で考えるとノーコードツールが本当に使えるものになってしまうと、自分の立場がなくなってしまうのでは?と思えてきます。

ただ、既製品であるノーコードツールには限界があるので「ノーコードツールなんてどうせすぐに限界が来て使えないんじゃないの?」と考えたくもなります。

私自身kintoneを使い始めた当初は「むむむ、もうここで限界なのか???」と思う箇所がたくさんありました。

kintoneは現在16,000社程度に入っているそうです。しかもかなりの割合でいわゆる開発者が関与しない形で導入されています。できないことはたくさんあるけど、たくさんの人が使っているわけです。

これを考えると、世の中には常に不可避かつ不可逆な流れがあることが思い出されます。

あるものが民主化していくとき

以前は専門知識がないと使えなかったけど、技術が進化することによって誰にでも使えるようになったものがたくさんあります。

例えば、携帯電話

携帯電話さらにはその前の自動車電話の登場以前は、いわゆる無線機を使わないと遠隔地の相手と無線通信で話をすることはできませんでした。無線機は一部のものを除いて免許が必要です。つまり、専門知識がないと使えないというものでした。

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それが、携帯電話の登場により誰でも外で無線を使って会話ができるようになりました。もちろん無線に関する専門的な知識は必要ありません。それは機能を標準化することによって、専門的な部分を隠蔽しているからです。

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また多くの人が使うようになることで値段も下がっていきます。出た当時の携帯電話なんてむちゃくちゃ高かったですからね・・・。

なぜこういうことが起きたかというと、多くの人がほしいと思ったからですよね。

機能が標準化されたことによって、できないことがたくさんあるかというと、それもだんだん解消されてきています。いわゆるフィーチャーフォンからスマートフォンになり、自由自在にアプリを入れて自分好みの機能の携帯電話にできるという世界はみなさんも享受されていることと思います。

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では、情報システムはどうでしょうか?今となってはほぼすべての企業およびそこで働く人は、便利な情報システムがあれば仕事が楽になるのになぁと思っていると思います。つまり、ほしい人がたくさんいます。

ほしい人がたくさんいるものは民主化していきます。そして、スマートフォンのように世の中の人が思っていた以上の世界が実現されることがあります。

ノーコードは、この情報システムの民主化の流れだと考えています。

開発者は滅びるのか?

まだノーコードツールは発展途上です。できないこともたくさんあります。その点を捉えて「ノーコードツールはプロトタイピングツール」と捉えている方もいらっしゃいます。それも一理あります。ノーコードツールをプロトタイピングに使って、イメージが固まってからスクラッチ開発するという手法も悪くない手法だと思います。

今後ノーコードツールが発展するにつれて、できることは当然のように増えていきます。実際kintoneは標準機能ではできないことも、我々だけでなく、たくさんのサードパーティのツールによってどんどん実現されていくというエコシステムが出来上がっています。

では、このままノーコードツールが発展すると開発者は滅びるのか?

滅ぶことはないと考えています。ただし、開発者は3つのタイプに分かれていくと考えています。

  • ノーコードでできない部分を開発するエンジニア
  • ノーコードツールの利用スキルを極めることで誰よりも早く効果的な情報システムを開発するエンジニア
  • ノーコードツールそのものを開発するエンジニア

弊社には、この3種類のエンジニアがすべています。もちろんそれぞれが別々の人ということではなく、この3種類のスキルをそれぞれのエンジニアがいくつかもっていて、全体としてすべてをカバーしています。この3つのタイプのエンジニアの需要をすべて把握できるのが弊社の強みだと思っています。

そして、フィーチャーフォンからスマートフォンが生まれてきたように、情報システムの世界でも、誰もが想像しなかったような変革がそう遠くない未来に起きるんじゃないかと思っています。その返還を起こすのが自分たちであればうれしいですが、自分たちでなくとも、そういう流れは不可避であろうと考えています。

みなさんも、昔は専門家が必要だったけど、いつのまにか専門家がいなくても使えるようになったものを考えてみていただくと、この流れがすっと理解できるんじゃないかと思います。

投稿者プロフィール

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金春 利幸
"gusukuシリーズプロダクトマネージャー
ノーコード(No-Code)の有効性に着目し、kintoneとgusukuシリーズの普及のため全国を飛び回っています。"