公開日:2020-06-18
kintone(キントーン)のはじめかた(1) 業務改善の基礎で業務フロー図を描こうというお話をしましたが、このコラムでは実際に業務フロー図をどうやって描けばいいかということをお伝えしたいと思います。
kintoneでのアプリの作り方として、事前に業務フローをしっかり捉え、業務分析を行うことがとても大切です。慣れてくるとある程度頭の中でできるようになりますが、慣れないうちはしっかりと図に落として俯瞰する習慣がとても大切です。
kintoneを使うかどうかに関わらず、業務改善には業務フローを正しく分析することが大切ですので、みなさんもぜひ描いてみてください。
今回ご紹介する業務フロー図の描き方は、あくまでも弊社でやっている1つの例です。これが正解だとかこれじゃないとダメという話ではありませんので、みなさんが今後自分にとってわかりやすい業務フロー図を描くためのヒントになれば幸いです。
重要なのは軸
業務フロー図の描き方には色々ありますので、わかりやすければお好みの方法でよいのですが、できるだけ多くの人にわかりやすい業務フローという意味では、軸がしっかりあるということが重要なポイントではないかと思います。
人が資料を見るとき、必ず何らかの軸に沿って見ようとします。そして、だいたいその出発点は左上になります。ですので、左上を基準として右方向と下方向に軸があるのが望ましいです。
また、時間軸を表現する場合、人は横方向の方が理解しやすいです(縦方向でも理解はできるのでダメというわけではありません)
業務フロー図では、誰が・いつ・何をするという情報が重要となりますので、横方向を時間軸だとすると、縦方向は必然的に「誰が」の軸になります。
横軸:「いつ」の見つけ方
描こうとしている業務が月に1回、20日に開始して3日間で終わる業務であれば、横軸は 「20日、21日、22日」でも構いません。ただ、多くの業務はカレンダーの日付とは無関係に発生し、各々の業務が進むタイミングも一定ではなく、バラバラになることが多いと思います。
そのため、横軸は時間軸ではあるものの、実際の時間でなく、その業務の「ステップ」を使うことが多いです。
案件管理のような業務であれば、
- 引き合い
- 見積
- 受注
- 生産
- 納品
- 請求
のようにステップが進んでいくと思いますので、これを時間軸として定義するのはよい考えです。
また、このステップを明確にすることにより、業務が流れていく中でのチェックポイントもわかりやすくなりますのでオススメです。
縦軸:「誰が」の見つけ方
縦軸の「誰が」をどうやって定義するかですが、ここでやりがちなのが「役職」を軸にしてしまうことです。「役職」はあくまでも会社での立場を表現しているだけであって、実際の業務と合致していないことも多いです。
縦軸にふさわしいのは「ロール(役割)」です。役職や部署は無関係に、その業務でどういう役割をするのかを観点に縦軸を決めていきましょう。結果として役職と一致するケースもありますが、ロールを主軸に考えた結果であれば問題ありません。
役職とロールの見分け方ですが、「○○担当」と呼んでみて違和感がないものがロールと思ってもらうと、おおよそ正しいと思います。「営業担当」は違和感がないですが、「部長担当」は違和感がありますよね?
ここまでの結果
ここまでの内容を図にしてみるとこんな感じになります。
ちなみに、業務フロー図を描くためのツールはなんでも構いません。弊社ではパワーポイントで描くことが多いのですが、エクセルで描くケースもよく見かけます。エクセルで描く場合は、スペースに制約がないため、長く・複雑なものを描きがちになる傾向があるのでその点はご注意ください。
業務ボックスの捉え方
さて、軸が決まったので、実際の業務の流れを描いていきましょう。ここでよくやる間違いが、作業と遷移を取り違えるという問題です。
業務は、作業した結果を次の人に渡すという遷移で成り立っています。業務フロー図においては、作業が業務ボックス、業務ボックスと業務ボックスをつなぐ線が遷移となります。
この作業と遷移を区別する方法が少し悩ましいのですが、作業は「○○する」「○○作業」と呼んでも違和感がないものを、遷移は、「XXが□□の△△を○○する」としても違和感がないものにすると大きく外すことはないと思います。
いくつか例をみてみましょう。実は、これが難しくて微妙なやつもあります。
キーワード | 作業? | 遷移? | 結論 |
---|---|---|---|
見積 | 見積する 見積作業 | XXが△△に見積する? | 作業 |
承認 | 承認する 承認作業 | 承認者が営業の見積を承認する | 遷移 |
発注 | 発注する 発注作業 | お客様が営業に発注する | 作業 |
3つ目の発注は難しいですね、どっちとも取れてしまいます。こういうときは「発注」という言葉が曖昧だということです。
これを「発注書作成」と「発注書送付」に分けると答えは明確になりますよね? もう1つの方法としては、遷移は「○○依頼」と呼んでも違和感がないものが多いです。
業務フロー図の使い方
ここまでの内容を元に1つの例として業務フロー図を描いてみました。
業務フロー図を描けたとして、次は何をすればいいでしょうか? 時間はかかるのですが、できることなら業務記述することをおすすめします。
これは1つ1つの業務ボックスについて、以下のような項目を文章として書いていきます。
- 業務名
- 実施するタイミング・条件
- 担当者(ロール)
- 業務内容を1ステップずつ箇条書き
- イレギュラー状況とその対処方法
- 想定作業時間
- 課題と思われる箇所
ここで、想定作業時間と実際の作業時間の差が大きい作業を見つけたり、課題が多い・大きい作業を見つけて、それの解決策を考えます。
課題を解決するには?
問題の業務が見つかったとします。ではそれをどうやって解決しましょうか?業務改善だけでなく、問題を細かく分解することが大切です。
例えば、「見積確認からの差し戻しが多い」という課題が見つかったとします。それであれば、なぜ差し戻しが多いのかというところを深堀りしていきます。
第一階層 | 第二階層 | 第三階層 |
---|---|---|
見積確認からの差し戻しが多い | 見積金額の間違いが多い? | 各項目の金額がすぐにわかるようになっておらず、紙資料を調べて金額を出している |
A商品を入れる場合は、B商品をセットで入れる必要があるが忘れがち | ||
過度な値引きを入れている? | 引き合いからの回答時に、正しく製品価値が伝えられていない | |
値引きを言われたときに、交渉せずにすぐに値引きにこたえている |
このような感じで、問題を最低でも3段、できれば5段くらいに分解してみてください。
そして、その最下層の課題に対して、どうすれば解決できるかを考えてみてください。問題を分解すればそれぞれの課題の解決策は考えやすくなると思います。
例えば、「各項目の金額がすぐにわかるようになっておらず、紙資料を調べて金額を出している」であれば、「kintoneに商品マスタを作成して、ルックアップで選ぶだけで金額が入るようにする」という解決策が思いつきます。
まとめ
kintone を使った業務改善は、いきなりkintoneアプリを作ればできるものでもありません。大変ですが適切な準備が必要になることが多いです。
今回ご紹介した方法は、最初にも書いたようにあくまでも1例です。これをヒントにみなさんならではの分析方法を編み出していっていただければと思います。
慣れてくれば、頭の中でできるようになってきますので、あきらめずに継続的に改善を続けて、kintoneでいい業務改善を目指してください。