公開日:2025-04-08
総勢700人が利用する大規模な受注管理システムをkintoneで構築し、年間36万枚の紙削減など多数の効果を実感


NTTビジネスソリューションズ株式会社
カスタマーサクセス部 サービスコーディネート部門 サービスコーディネート担当
課長 古城 弘路 さま
吉田 順子 さま
森井 諒 さま
竹口 真理亜 さま
NTTビジネスソリューションズ株式会社のカスタマーサクセス部は、西日本エリアにおける光回線「フレッツ光」の開通業務を行う部門です。この度、光回線の受注を担う販売代理店と開通手配を行う8つのセンターを結ぶ大規模な受注管理システムをkintoneで構築されました。技術・セキュリティともに配慮が必要な同システムの開発に、アールスリーの開発とノーコードでkintoneをカスタマイズできるgusuku Customineをご利用いただいた経緯とその効果をうかがいました。
もくじ
1.人頼みの業務フローを改革し、社員が減っても対応可能な仕組みを築きたい
2.社内のペーパーレス化の波に乗り、kintoneで年間36万枚の帳票電子化にチャレンジ
3.社内の別プロジェクトで実績があったアールスリーにkintoneの開発を依頼
4.NTT西日本グループと代理店を結ぶkintoneによる受注管理システムが完成
5.8センターの意見をあつめ、現場想いのアプリをチームワークで内製開発
6.アールスリーは要望の背景を咀嚼し実現方法を真剣に考えてくれた
7.36万枚の帳票を削減・人員減少の中でも業務を維持など、効果多数
8.RPAの導入でさらなる業務効率化をめざしたい
1.人頼みの業務フローを改革し、社員が減っても対応可能な仕組みを築きたい
Q:kintoneアプリ開発前の課題について教えてください。
古城さま
当社では年間で約18万件のフレッツ光回線の販売と開通工事を行っています。販売は代理店が担当し、NTT西日本グループの8つのセンターが工事手配を行います。この業務をこれまでは電話や書類、Excelなどレガシーな手段を使い「人の力」で行ってきました。昨今の少子高齢化で社員がどんどん減る一方で、仕事は減りません。そのギャップを埋めるために機械に頼ろうと思っても、書類中心のやり方のため頼ることができませんでした。

吉田さま
フレッツ光回線の手配業務には代理店と契約や工事の詳細を詰める「コンサルティング業務」と、NTT西日本グループ内で工事手配を行う「バック業務」があります。これまでは代理店とのやり取りをもとに紙の帳票を作成し、その帳票に沿って工事手配が行われていました。工事日が変更になると、倉庫から帳票を取り出して変更帯をつけて工事担当者に申し送りますし、手配件数がたまった時は書類が山積みになるので、その山を切り崩していくように仕事をしていました。業務分担の範囲も書類のフォーマットもセンターごとに違うので、同じ商品に関する業務でも一人当たりの処理時間や生産性がバラバラでしたし、ボトルネックになっている業務もあり効率が良いとは言えない状況でした。

2.社内のペーパーレス化の波にのりkintoneで年間36万枚の帳票電子化にチャレンジ
Q:8センターと代理店を結ぶ業務をkintoneアプリ化したきっかけは何でしたか?
森井さま
kintoneは代理店との業務用として以前から導入されていましたが、チャット機能の利用くらいにとどまっており、色々な機能を使いこなせていませんでした。そんな折、社内の業務標準化ワーキングプロジェクトの中でペーパーレス化の風が吹きました。センターでは年間約36万枚の紙帳票を使っており、その帳票を電子化すれば紙を大幅に削減できます。私たちはペーパーレス化の波に乗りkintoneで帳票の電子化に取り組むことになりました。

3.社内の別プロジェクトで実績があったアールスリーにkintoneの開発を依頼
Q:色々なkintoneアプリの開発会社がある中でアールスリーにご依頼いただいた決め手は?
古城さま
kintoneはノーコードでユーザーに優しいインターフェースとはいえ、私たちのチームは事務系の出身で技術屋ではありません。西日本の8センターをまたぐ大規模なシステムを自分たちだけで作ることには不安がありました。また上層部からも、社外と共用する部分についてはプロに依頼してセキュリティが担保されたアプリを作るようにとの指示もありました。そこで別事業(マンション向けの光回線を扱うアプリ)のkintone開発で取引のあるアールスリーに依頼することにしました。
4.NTT西日本グループと代理店を結ぶkintoneによる受注管理システムが完成
Q:kintoneで構築した「コンサルアプリ」について教えてください。
吉田さま
コンサルアプリは、年18万件の光回線のオーダーを処理するアプリです。kintoneの利用規模は代理店が約400、センターが約300の合計700アカウントです。主要なアプリは、センターが代理店と契約や工事の詳細を詰める「コンサルアプリ」、センター内部のフロント業務とバック業務間を連携する「センタ内連携アプリ」、センター内のバック業務専用の「バック業務管理アプリ」の3つです。
中でも「コンサルアプリ」は社外と連携するためセキュリティに対する厳しい要件がありました。例えば、NTTビジネスソリューションズが所有している受注情報の一部だけを代理店に開示したい、代理店の情報が他の代理店に見えないようにするなどです。また700人規模でkintone標準のコメント機能を使いフリーテキストで業務連絡を行うとタスクの抜け漏れが発生するので別の方法でタスク管理をしたいなどの要望もありました。
そこで今回の開発では、開発難度が高くセキュリティにも配慮を要する「コンサルアプリ」の開発はアールスリーにお任せし、社内で使う「センタ内連携アプリ」や「バック業務アプリ」の開発は私たちのチームで内製しました。
コンサルアプリ構成図

Q:コンサルアプリのことを業務フローの流れに沿ってご紹介をお願いします。
- 基幹システムから抜き出した受注データをkintoneにインポート
SEが毎朝、基幹システムから受注データ(取次データ)をRPAで抜き出してkintoneにインポートします。

- コンサルアプリにレコードを一括作成し、案件を担当者に割り当てる
1受注(1取次)に対して1レコードを作成することに決めてアプリを構築しました。

- センターと代理店が共同で回線工事の詳細を詰める作業を行う
「コンサルアプリ」はセンターと代理店の総勢700名がやり取りを行うアプリなので、セキュリティの担保やタスク管理など数々の工夫が盛り込まれています。

【開発の工夫1】受注番号を画面上部に大きく表示
コンサルアプリのフィールド数(入力項目数)は非常に多いです。画面下部までいくにはかなりのスクロールが発生するため、お客さま情報を取り違えて情報漏洩を起こすリスクがありました。その防止策として取次ID(注文番号)が画面上部に赤字で表示されるようにしました。スクロールしても赤字のIDが追ってくるのでミスを防止できます。この機能はセンターからの評判がとても良いです。

【開発の工夫2】代理店が入力すべき項目を瞬時に見分ける工夫を実装
代理店に入力してほしい項目に対してセンターが「★」印を入れるとフィールドが黄色背景に変わります。代理店は黄色い項目を目印に入力を行います。この工夫でセンターと代理店の双方にとって使い勝手の良いアプリになりました。

【開発の工夫3】独自開発の「コメント機能」で会話をタスク管理
センターと代理店とでフリーテキストによる会話が必要な場面があるのですが、kintone標準のコメント機能は返信の要否や返信したかどうかの管理が難しく、抜け漏れの原因になるため利用をやめ、別途管理しやすい「コメント機能」を開発しました。1コメント1レコードとして専用のアプリに登録し、返信の要否や返信済かどうかのステータスを持たせることで管理できるようにしました。ステータスは自動的に更新されるようになっています。

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【開発の工夫4】「承認済みのファイルだけ」が代理店に表示される仕組みを実装
センターから代理店に秘匿性の高いファイルを共有する場合は、情報セキュリティ事故を防ぐために「ファイルアップロードアプリ」を使います。このアプリではアクセス権とプロセス管理の機能を組み合わせて、センター責任者の承認を経たファイルだけ、代理店が閲覧することができます。


アールスリー山田
当初、ファイルをコンサルアプリのフィールドに添付の上、センター責任者の承認を経たものだけ代理店へ公開したい、というご要望を頂きました。しかし、コンサルアプリ上ではセキュリティの要件を満たすことが難しいため、ファイルアップロード用のアプリを別で用意する形をご提案しました。というのも、コンサルアプリ上でご要望を実現する場合、センター責任者が承認する前のファイルを代理店が閲覧できてしまうリスクがあったので。そこで、コンサルアプリではなくファイルアップロード用のアプリにファイルは添付の上、コンサルアプリと紐づける形をご提案しました。ファイルアップロード用のアプリではkintoneのアクセス権とプロセス管理を使い、承認済のレコードのみを代理店へ公開する、という形でご要望を実現しています。この形だと、意図しない形で代理店がファイルを閲覧するリスクを減らすことができます。

- センター内限定のアプリでバック処理(工事手配など)を行う
吉田さま
最後の行程はセンター内での工事の最終手配です。センター内だけで利用するアプリは、私がkintoneやgusuku Customineを学び、内製しました。中心となるのは「センタ内連携アプリ」「バック業務管理アプリ」で、光回線の工事に関する社内手配を行います。開発では現場が使いやすいアプリにするために色々な工夫をしました。例えば、担当者が何のアプリを開いているか視覚的に分かりやすくするためにアプリごとに背景を色分けしました。コンサルアプリは青、センタ内連携アプリは赤、バック業務管理アプリは緑、代理店は黄色を基調としています。
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Q:コンサルアプリの要件を満たすために複数のアプリを連携しているのですね。
吉田さま
最初の構想ではコンサルアプリにこれらの業務の機能を盛り込もうとしていました。しかし、アプリの利用者が違うので、別のアプリとして分けて作成したほうが良い、というアールスリーのアドバイスにより複雑だったイメージがとてもシンプルになり、自分たちでアプリを検討し作成を進めることができるようになりました。
5.8センターの意見をあつめ、現場想いのアプリをチームワークで内製開発
Q:御社の開発メンバーはkintoneの初心者だったとのことですが、アプリの内製もされたのですね。8センターの要望を汲み取っての開発では苦労されたのではないでしょうか?
吉田さま
開発していると色々なセンターの担当者の顔が目に浮かぶので「あの人も使えるようなアプリにしよう」と考えながら作りました。センターからの要望はできるだけ採用する方式で作ったのですが、矢のように飛んでくる要望を森井さんが盾のように受け止めてくれたおかげで私は開発に専念できました。チームワークを発揮できたと思います。また「センタ内連携アプリ」はセンター内だけで使うので「コンサルアプリ」の機能を真似するなどして思い切って作ることができました。開発ノウハウは、クラウドユニバーシティでのkintone基礎講座やgusuku Customine講座を受講して開発について体系的に学びました。今では思い通りに動くようにと試行錯誤をするのが楽しいです。

6.アールスリーは要望の背景を咀嚼し実現方法を真剣に考えてくれた
Q:アールスリーの開発への感想もお聞かせください。
森井さま
8つのセンターそれぞれに歴史があるので、やり方も体制も違っていましたし帳票もバラバラでした。そんなセンターの意見の多くを反映する方向で開発をしたのでアールスリーには仕様面で多くのお願いをすることになりました。その際に自分たちの専門用語で自社のストーリーを語るのですが、アールスリーは要望の背景を考えて咀嚼し、kintoneにどのように組み込むかを真剣に考えてくれました。数々の要望を聞いていただき、感謝に堪えません。
古城さま
今回の開発は大規模なプロジェクトでありながらスムーズに運びました。アールスリーが業務を理解することに時間をとってくれたり、チームメンバーが開発の知識をつけてアールスリーとうまく連携してくれたりしたからです。開発中にセキュリティ要件が増えるなど想定外のことも起こった際には、アールスリーが辛抱強く課題と向き合ってくれました。またチームメンバーはセンターの意見をまとめる作業が本当に大変だったと思いますが、根気強くやってくれて乗り越えてくれました。チームメンバー全員に心から感謝します。
竹口さま
私はチームに加わって間もないのですが、これから学びながら1人でkintoneの改修に携われるようになりたいです。開発は難しそうと感じつつも先輩方やアールスリーのサポートがあるので心強く感じています。

アールスリー鈴木
ご要望をきちんと理解するのは大変なことですが、これこそがアールスリーが大切にしている開発プロセスです。社内用語とその定義を把握したり、ご要望の背景を理解したりしてから開発をするからこそ現場で機能するアプリができると思うので、業務を知る努力は惜しみません。今回は難度の高い要望が多数ある開発で色々な工夫が必要でしたが、センターや代理店の皆さまに使ってもらえているようで嬉しいです。

7.36万枚の帳票を削減・人員減少の中でも業務を維持など、効果多数
Q:kintoneの導入効果をお聞かせください。
古城さま
人員減少の中でも業務を維持できており、業務効率化の効果を実感できています。
吉田さま
kintoneの導入によりマネジメントが大幅に改善されました。紙の帳票だと何を把握するにも書類を取り出す必要がありましたが、kintoneではセンター全体の状況も個別の案件の状況も簡単に把握できます。また担当者レベルでも業務は大幅に効率化されました。特にセンターと代理店間の非同期コミュニケーションができるようになったことは重要でした。センターの日中のコメントに対して代理店は夜間に返信を行うなど「自分のタイミング」で連絡ができるため、人員減少に伴うセンターの営業時間短縮化が進めばこの機能の重要性は増すでしょう。他にも、書類ベースの業務で発生する煩雑さも解消されました。
書類仕事による煩雑さの解消例
- 紙の管理からの解放
- プラスチックボックスでの物理的なファイル管理が不要に
- 付箋やクリップによる煩雑な管理方法が解消
- 倉庫での書類探しが不要に
- 工事日などの期日管理もデジタル化
- センターと代理店間の非同期コミュニケーションの実現
森井さま
代理店とのやり取りにおいて利用していた紙は最大36万枚も削減できました。また、センターと代理店とのやり取り回数が激減していることも効果の1つです。元々は電話やフリーテキストベースで1案件あたり平均4回ほど会話をしていましたが、現在はkintone上で「★」印を使って1度のやりとりで代理店に入力して欲しい情報を全て伝えることができています。また、電話でのやり取りと異なり、相手の都合を気にしなくても良いのはkintoneの利点です。センターからもアプリの改善意見もいただきますが、使いやすくなったというお声もいただいています。今後kintoneにもっと慣れたらさらに効率化が進むでしょう。
8.RPAの導入でさらなる業務効率化を目指したい
Q:最後に今後の展望をお聞かせください。
古城さま
紙の帳票で業務進行をすると基幹システムと連携する時に手入力が必要ですし、業務の自動化もできません。kintone開発を通してデータの電子化およびアウトプットデータの統一ができたので、基幹システムへのデータ投入にRPAを入れる施策が可能になりました。これから社員が減る中で業務の自動化は避けられませんが、その第一歩として代理店チャネルでの業務自動化の基盤が整い、さらなるデジタル化への可能性が開かれたことは大きな成果です。今後はこれらの基盤に加えてRPAを稼働させ、さらなる業務効率化を目指します。

貴重なお話をありがとうございました!
アールスリーでは、本案件のようなkintoneアプリの開発や内製化に繋がる構築支援サービスをメニュー化し、2024年4月に「キミノマホロ for kintone」としてリリースいたしました。作業内容やメニューごとの価格体系を載せていますのでぜひホームページでご覧ください。