株式会社SSマーケット様 事例紹介

公開日:2024-12-18

クリックや画面遷移を徹底的に削減し、現場が使いやすいアプリを実現。急成長企業の業務改善とデータ活用を支えるカスタマイン

株式会社SSマーケット
IT統括部 部長 金 泰源 様
IT統括部 ITイノベーション課 藤崎 杏子 様
IT統括部 ITイノベーション課 金本 盛彦 様

株式会社SSマーケットは、法人向けのパソコンをはじめとした機器レンタル事業を中心としている企業です。パソコン、スマホやタブレット、複合機やプロジェクターなど、幅広い機器を取り扱っています。東京に本社と神奈川に倉庫、大阪府や九州に支店を持ち、企業に1台から大量台数まで、機器のレンタルを行っています。

同社は2012年に2名で設立、少しずつ社員を増やし数十名となった2020年、コロナ禍となりました。パソコンレンタルを行っている同社では、コロナ禍によるリモートワークの増加によって、レンタルパソコンの需要が爆発的に増えました。

この需要に対応するため、社員の人数がさらに増えて現在は150人ほどまで増加しています。

案件管理や契約管理、倉庫の管理などを表計算で行っていましたが、急成長していったことで業務の流れに様々なひずみが出はじめます。これをなんとかしようと考え、2023年9月にkintoneを導入、数か月後にはgusuku Customineを導入し、営業や倉庫の課題を次々と解決しています。

その経緯や効果について、IT統括部 部長 金泰源氏、IT統括部 ITイノベーション課 藤崎杏子氏(崎は立つ崎)、IT統括部 ITイノベーション課 金本盛彦氏の3名に詳しくお話を伺いました。

急成長のひずみ。限界を迎えた表計算からkintoneへ

法人向けにパソコンやスマートフォン・タブレット、複合機、プロジェクターなど幅広い機器のレンタルサービスを提供する同社では、コロナ禍におけるリモートワーク需要の増加を背景に、急成長を遂げてきました。展示会や選挙など短期間の利用から企業の長期利用まで、多様なニーズに応える柔軟なサービスが特徴です。「どんな無茶ぶりにも対応します!」という姿勢に共感する顧客も多く、要望に応じて新しい商材が増えていったことも成長の要因です。

急成長に伴って全国に支店を展開し、社員数も数十名から約150名に拡大しました。しかし、急拡大は業務の流れにさまざまなひずみをもたらしました。契約や案件管理の多くが表計算ソフトで行われていましたが、急速に拡大する業務に対応するには限界が見え始めていました。

もともと倉庫で出荷担当だった藤崎氏は当時のことを以下のように話します。

「営業部門からの依頼に応じて出荷を受け付けて対応していましたが、担当営業別・お客様別に何十シートものスプレッドシートがありました。レンタル業界向けの基幹システムもあるのですが、お客様ごとの追加の要望は入力することができなかったため、個人の経験と感覚で業務を進めている状況でした」(藤崎氏)

2022年4月に入社したエンジニアの金氏は、ITに詳しい人材がいなかった会社の状況に驚きました。

「営業も倉庫も原始的な方法で管理していて、効率化が急務だと感じました。そこで、クラウドサービスを活用することで効率化、DX推進をしていくことにしました」(金氏)

早速システムの最適化を検討し、SaaSの活用が現実的ではないかと考えていたところ、取締役に「kintoneがいいらしいよ」と聞いた金氏。

「kintoneを触ってすぐに『今必要なのはこれだ!』と確信しました。私自身はプログラミングができますが、今後コードを書ける人材が増える予定はありません。属人化を避けるためには、ノーコードツールが良かったんです。ノーコードツールだと物足りないのでは?と思っていたのですが、kintoneは機能面でもプロセス管理やアクセス権の制御など、表計算でできなかったことが実現できるとわかり、導入することにしました」(金氏)

属人化を防ぐ選択。カスタマイズもノーコードで!

こうしてkintoneの活用がはじまりました。使い始めるとそのうちに基本機能で足りない部分が出てきたので、次にプラグイン探しをはじめました。金氏自身、プログラミングはできるのですが、kintoneを選択した理由と同様に属人化を防ぎたかったため、JavaScriptでのカスタマイズは行いませんでした。

プラグインをいくつか使い始めてすぐに、大量にプラグインを入れると競合すると気づいた金氏。実際に競合が起こったのは数回でしたが、自身のプログラミングの経験からこれ以上プラグインを入れるのは危険だという判断に至りました。

競合の問題だけでなく、大量のプラグインは管理や使い方を覚えるのも負担になりますし、金額も嵩張っていくと感じました。また、無料のプラグインはサポートの面で不安があります。

日々情報収集していたことでカスタマインの存在も知っていた金氏は、たくさんのプラグインを使う路線はやめてカスタマインが良いのではないかと感じ、試用を開始。その後アールスリーの担当者からやりたいことを実現できると聞き、導入に踏み切りました。

導入後は、プラグインを次々にカスタマインに置き換えていきました。プログラミング経験のある金本氏も入社し、kintoneとカスタマインの活用はさらに進んでいくこととなります。

営業部門の課題解決!使いやすさを追求したカスタマイズの全貌

kintone導入後、最初の1年は営業部門のみで活用を開始しました。営業部門は社員数が多く、案件の獲得を担う重要な部門でありながら、数多くの課題を抱えていたためです。

同社の営業部門は、インサイドセールスやフィールドセールス、官公庁担当、長期レンタル担当など6~7つの部署があります。

kintone導入前は、これらの各部署が個別で案件管理を行っていたため、全体としての統合的な集計ができていない状況でした。

30ぺージに及ぶカスタマイズで現場の多様なニーズに応える

このバラバラに行っていた案件管理を、kintoneでは1つのアプリに集約することにしました。この案件管理アプリは、案件が発生すると営業部門のユーザーがレコード追加、案件の進捗によって編集を行います。

各部署のニーズはカスタマイズで解決すると決めて使いやすさを追及した結果、現在では30ページにも及ぶカスタマイズがなされています。

グラフィカル ユーザー インターフェイス, アプリケーション

自動的に生成された説明
ページメニュー

一覧画面では、未処理・成約・処理中といったステータスごとに背景色を変えたり、納品期限を超過しているフィールドの背景色を変更したりしています。また、検索フォームもカスタマインで設置しています。

レコードを開くと、ログインユーザーの所属する部署に合わせて必要のないフィールドは非表示になるよう、カスタマイズやフィールドのアクセス権を駆使しています。非表示にしているフィールドもたくさんありますが、関連レコードなど表示するフィールドも多数あるため、タブで分けて表示することによって可読性を上げています。

活動履歴アプリで活動予定のタスクを管理しています。案件が発生したことによって出てくるタスクを、案件管理アプリにレコードを登録したタイミングで活動履歴アプリにタスクとしてレコードが作成されるカスタマイズも行っています。

案件管理アプリには関連レコードで表示することで、その案件に付随するタスクの進捗状況がわかるようになっています。

ダイアグラム

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案件管理アプリや活動履歴アプリの構成図

グラフィカル ユーザー インターフェイス, アプリケーション

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案件管理アプリで、タスクレコードを作成

カスタマイズの力で現場にも経営にも喜ばれるアプリへ

また、案件管理アプリには顧客の情報も必要になります。顧客情報は、基幹システムに元データがあり、kintoneではそのSaasから取り込んだデータを顧客マスタアプリとしています。

企業情報や担当者をルックアップで取得する必要があるのですが、キーとなるフィールドは顧客IDです。ユーザーは顧客IDを覚えていないため顧客を探すには、取得ボタンを押した後に顧客名や現場名で絞り込みをする必要があります。しかし、「取得」ボタンを押した後に「絞り込みボタンを押下」→「絞り込み対象のフィールドを選択」→「絞り込み条件を選択」→「絞り込む値を入力」という作業がユーザーにとっては煩雑で、「顧客を探すのが手間で、見つけるのが大変」と不満の声が寄せられました。

「そこで、『顧客&現場検索』のボタンを設置して押すとダイアログを表示させ、そこに顧客名やキーワードを入力することで検索できるようにしました。検索結果から『決定』ボタンを押すと、ルックアップが取得されるようになっています。このカスタマイズはユーザーからとても好評です!」(藤崎氏)

グラフィカル ユーザー インターフェイス, アプリケーション, Word

自動的に生成された説明
顧客や現場担当者を検索→フィールドにセットされ、ルックアップ取得

さらに、「顧客追加」「担当者追加」ボタンも用意し、マスタアプリにデータがない場合にはそのままマスタに登録できるようなカスタマイズも行っています。マスタアプリを開きなおしてレコード追加をし、再度案件管理アプリに戻るなど、画面を行き来する必要をなくしています。

「ITに慣れている人からすると、別タブでマスタアプリを開いて登録することはそんなに大変だとは思いません。しかし、現場はそうではありません。藤崎さんは現場に一番近い存在で、ユーザーの困っていることを一番よく聞いて知っています。だからこそ、ユーザーのひと手間を削ってあげられるアプリにできていますね」(金氏)

こうして使い勝手を向上するのみならず、集計や経営判断に必要な情報を入力してもらうためのカスタマイズも行っています。

「案件を失注してしまった場合の失注理由は、分析して今後の改善のためにつながる大切な情報です。必須で入力してもらえるよう、失注になったらダイアログを表示し、失注理由を入力するようなカスタマイズも入れています」(金氏)

ただ必須にするのではなく、ユーザーの使い勝手を考えて、ダイアログを出してそこから入力できるようにすることで、必須のフィールドを探す手間を省いています。

セキュリティと効率を両立する帳票出力

さらに、Excel出力機能もフル活用しています。

例えば長期で貸出中の機器に関して、一覧でデータを閲覧したり送付したりすることがあります。従来は基幹システムで必要なデータを検索し、Excelファイルに書き出していました。しかし、基幹システムでは必要な情報が探しにくく部分的にしか出力できないので、Excelファイルを複数書き出すことがありました。複数のExcelファイルから必要な情報を集めて一つのExcelファイルに成形していましたが、この作業に数十分かかることもありました。

これをkintoneで解決しようと考えましたが、ユーザーにファイルの書き出し権限を与えてしまうと、非表示になっているフィールドも書き出すことができてしまいます。

そこでカスタマインのExcel出力機能を活用しています。必要な情報のみを出力できるExcelテンプレートにすることで、kintone自体の書き出し権限は与えずにExcelの出力が可能になりました。

カスタマインを活用し、セキュリティを守りながら必要な情報を出力できるようにしました。また、手作業で複数のExcelファイルをまとめる際にはミスの恐れがありましたが、今は一つのファイルで済むようになったのでミスの恐れもなくなりました」(藤崎氏)

複数のExcelを集めて成形する必要もなくなったため、時間的にも短縮できました。

ユーザーの意識に変化。クリック1つを減らす工夫が生む業務改善

営業部門で使い始めた当初は「なんでこんなにクリックしないといけないの?必要あるの?」と懐疑的だったユーザーの意識が徐々に変わっていきました。

「入力してもらった先にどんな未来が訪れるのかということを、丁寧に伝えるようにしました。その上でカスタマインを活用してオペレーションコストをなるべく減らすアプローチをすることで、ユーザーに使ってもらえるようになったと思っています」(金氏)

ユーザーの要望をもとに、基本機能よりクリックを1つでも減らせるようにカスタマイズを行っていくことで、使ってもらえるようになっただけでなく、ユーザーが業務改善に前向きになっています。

「あまりカスタマイズしないでアプリをユーザーに渡すと反応は良くないのですが、カスタマイズで1つ手間を減らすことで、これならやってみようかな?と変わってくれています。最近では、ユーザーさんの会話の中で『こんなことをやってみたい』となった時に、『kintoneでやってみよう』という会話が聞こえるようになっています。導入当時はkintoneが会話に出てくることはなかったので、『まずはkintoneで』という声は嬉しいですね」(藤崎氏)

棚卸し作業を劇的に効率化!作業時間も人数も半減

同社では年に1度行っている貸出用機器の棚卸しにおいては kintone、カスタマインの導入効果が絶大です。貸出用の機器の棚卸しは、基幹システムのデータと機器に着けられた番号、倉庫内の棚位置が一致しているかを確認します。貸出用機器は4万点以上あり、数十名で機器に貼られたQRコードを読み取って在庫一覧の情報と突き合わせます。

以前はこの作業をスプレッドシートで行っていたため、いくつかの課題を抱えていました。共同編集によってデータの読み込みが遅く作業効率が悪かったことに加えて、データの集計にも膨大な時間がかかっていました。スプレッドシートは担当者ごとにシートを分けて入力していたのですが、入力された数値のフォーマットがバラバラで全角・半角が入り混じっていたため、倉庫での作業が完了した後にも集計に多くの時間を費やしていました。

kintoneとカスタマインでこの棚卸しの作業が劇的に効率化されました。

● 準備時間:1日→1時間以下で完了

● 作業担当人数:50人→30人に削減

● 作業日数:2日→1日に短縮

kintoneアプリではQRコードを読み取るとテーブルにデータが追加されるようにしました。カスタマインの活用によって、データ追加時に既存データとの重複や入力ミスを即座に発見できます。また、テーブルの行は自動で集計用の別アプリにレコードとして追加されます。

最終的にこのアプリをファイルに書き出すのみで済むので、シートをまとめる時間もなくなりました。

また、読み取った機器が正しい棚に収められているかチェックするカスタマイズを入れることによって、棚の位置が誤っている機器についてもすぐに誤りがわかるので、その場で正しい位置に戻すことができるようになりました。以前はすべてのシートをまとめてから、場所を誤っている機器を再度探してもとの場所に戻していたので、この手間もなくなりました。

「作業者からも『スイスイ読めて、わかりやすかったし早く終わるのでよかった』といった声が聞かれました。カスタマインで効率的に進めるアプリを作成できたおかげですね」(金本氏)

倉庫部門もデジタル化へ。全社のデータ活用を目指す

kintoneを2年、カスタマインの活用は1年という猛スピードで営業部門の業務改善を進めてきた同社では、これから倉庫部門の業務改善も進めていこうとしています。

レンタル事業の倉庫部門には、案件が決まると発送・出荷を担うチームと、戻ってきた機器を管理するチームがあります。

「それぞれで業務内容が異なるのでアプリは複数になりますが、同じものを扱っているので最終的にはアプリを連携していく必要があります。すでにkintoneアプリの作成やカスタマインによるカスタマイズなど、準備を進めています。これから業務運用に乗せて、今より効率が良くなっていくといいなと思っています。すでにある営業のデータと倉庫のデータ、事業すべてのデータがkintoneというクラウド1か所に集約されていくことで、データ活用につなげていけると良いサイクルになると考えています」(金氏)

さらに、kintone開発の将来的な方向性について伺いました。

「しばらくは3人でアプリ作成、カスタマイズを担っていきたいと考えています。『脱・表計算』、『脱・属人化』を目指してkintoneを導入したので、誰でも自由にアプリを作って良いとしてしまうと、再び属人化してしまう可能性があります。しばらくは3人で担当しつつ、もっと先には各部門にkintone開発者ができた方がkintoneに対する理解と親しみやすさにつながると思うので、将来的にはそうしていきたいなと思っています」と金氏に締めていただきました。

取材日2024年10月