カスタマインと7つの限界

公開日:2024-12-25

みなさんこんにちは、金春です。

この記事はCustomine(カスタマイン) Advent Calendar最終日の記事です。

このアドベントカレンダーはユーザーさんが立ち上げてくださったものです。

今年も開催していただき、ありがとうございます。

そして、本年も gusuku Customine をご利用いただきありがとうございました。

さて、Customine(カスタマイン) Advent Calendar最終日ですが、この記事が公開される12月25日には、僕は早めのお正月休みをいただいておりまして、海外にいます。年を越すと高いので、年内には帰ります。

まずは、数字でみるカスタマイン2024

昨年は「数字でみるカスタマイン2023」ということで、カスタマインにまつわる数字をたくさんご紹介しました。

せっかくなので去年と今年の数字の違いをまずみてみましょう。

項目20232024コメント
1人あたりのカスタマイズ数77.7劇的に増えた感じはないですね。1人が管理するカスタマイズの数はこれくらいで落ち着くのかもしれません
1日に作られるカスタマイズの数1702001日200個新しいカスタマイズが生まれるってすごいですよね
最大アプリスロット数766858トップはどことは言えませんが、昨年と同じ会社さんです
有料契約社数1,4001,900今年もサービスとして成長させていただきました
1日のJS生成回数5,0007,500順調に増えていますね(なお、インフラコスト・・・・)
総ユーザー数6,5008,400フリープランを含んでいます
累計カスタマイズ数100,000154,0001.5倍になりました。これだけの数のカスタマイズが実現されているというのには感慨深いものがあります

今年もたくさんの方にご利用いただき、各数値が伸びました。来年はどうなるか楽しみですね。

そして、昨年の記事の最後で

「みなさんがひゃっは〜!って言うような新サービス出す」

と宣言していましたが、ギリギリ発表はすることができました。そう、「gusuku Everysite」です。

エブリサイトについてはまだ語れることが少ないので、この記事では触れませんが、気になる方はYouTubeの動画をみてください。

カスタマインと7つの限界

実際にカスタマインを触っていただいて色々試していただいた系の記事はみなさんたくさんやっていただいているので、カスタマインの生みの親である僕だけが語れることを書いておこうかと思います。

カスタマインを出した頃に、よく聞かれて、未だによく聞かれるのが、

「なんで他のベンダーはプラグインを出しているのに、プラグインじゃなくカスタマインの形にしたんですか?」

という質問です。

kintoneのプラグインの仕組みは簡単にkintoneの機能を拡張できるという点でとってもいい機能だと思っていますが、カスタマインを作り始める前、アールスリーがいろんなお客様のkintone開発をお手伝いしていく中で、プラグインの仕組みでは7つの限界があると考えていました。

その7つの限界についてご紹介して、カスタマインではどう考えているかをご紹介します。

なお、プラグインを否定したいわけではなく、プラグインをだすベンダーさんが多いからこそ、プラグインでは実現しづらい選択肢を用意したいというのが我々の想いです。

1. 数の限界

1つのkintoneアプリに入れられるプラグインの数には20個という制限があります。色々機能を増やしたくても、20個入れてしまうと何かを外さないともう入れられません。

カスタマインでは、1つのkintoneアプリに追加できる「やること」の数に制限を設けていません。必要なものはどんどん追加することができます。

ただし、あまり入れすぎると作りによっては重くなりますので様子を見ながら増やしてくださいね。


2. 順序の限界

プラグインは実行順序を制御できません。

例えば、編集画面の保存ボタンを押して、保存される前に何かをするプラグインが2つあったとします。この2つのプラグインはどちらが先に動くかがわかりません。

実際は、プラグインを入れた順で実行されることが多いのですが、この順序は保証されていません。そう、この保証されていないということが業務で使うシステムが致命的なのです。

「実際は、そうなるからいいじゃないか?」

と言う意見があることも承知していますが、例えば、もしその順番が思った通りでなかったら、請求金額が狂ってしまう可能性があるとしたらどうですか?困りますよね。そのような可能性を残した状態で業務システムを提供することはプロとしてはできません。

カスタマインでは、基本的に処理を行う順序を自分でコントロールできますので、このような問題は起きません。「基本的に」と書いたのは、カスタマインで複数のページで同じ条件で行うアクションを作成した場合は、順序が保証されないためです。ですので、順序性が大事な処理は1ページ内で作成するようにしてください。


3. 競合の限界

いろんなベンダーさんのプラグインを1つのkintoneアプリに入れると正しく動かなくなることがあります。実はこの問題はカスタマインでも回避できておらず、カスタマインと一緒に他社さんのプラグインをいれると、カスタマインやプラグインの動作がおかしくなることがあります。

これは、端的に言うと、相手が何をやっているかはわからないので、画面上の同じ箇所をいじってしまったりするからです。上に書いた順序の問題が影響していることもあります。

この問題は本質的に回避不可能なため、たくさんの機能をカスタマインに用意することで、カスタマインだけでできるだけ要望を満たせるようにしたいと考えています。一部の我々が作らないと決めている機能については、正式に同居を認めるプラグインとして、動作に問題があった場合はそのプラグインのベンダーさんと協力して対応しています。


4. メンテナンスの限界

プラグインも定期的にバージョンアップされるものがあります。kintoneシステム管理でプラグインをアップデートすると、そのプラグインを使っているすべてのkintoneアプリでプラグインが最新になるので楽ちんではあるのですが、こと業務アプリとなるとそれが都合が悪いことがあります。

特に、バージョンアップによってプラグインの挙動が変わる場合、うかつにバージョンアップすると業務に影響が出ることがあります。

カスタマインは、「kintoneアプリへ登録」を押さない限り、生成されたJavaScriptは変わりません。これはアプリごとに行えますので、動作を変えたくない場合は、そのままにしておくことが可能です。

ただし、そのアプリに機能を追加して「kintoneアプリへ登録」を押すと、元々あった機能も最新になりますので、そこはご注意ください。

2024年の10月と11月に起きた、kintoneのテーブルの仕様変更によって「行増減ボタンを左端に移動する」などが動作しなくなる問題を修復するために、みなさんには「kintoneアプリへ登録」を使っている各アプリで押していただくという面倒な作業をしていただきましたが、これが必要になっているのは、このような理由からなんです。


5. 購買行為の限界

新しい機能が必要になるたびに、使えそうなプラグインを探して、それをお試しして、稟議を上げて、発注して、支払いして・・・って大変じゃないですか?稟議の大変さは会社によって大きくことなりますが、探して試すところの手間はどこの会社でも同じです。

カスタマインもアプリスロットが少ないプランでお使いの場合は、別のアプリで使いたくなっても追加購入が必要ということになりますが、アプリスロットに余りがあれば、新たな稟議をあげなくてもすぐに使えます。使えそうな機能を探すのも、カスタマインのドキュメントややることのリストをみるだけでOKです。

また、アプリスロットが足りない場合でも、すでに稟議が通っている製品のプランを上げる方が、新規の製品の稟議を通すよりは楽だと思います。

カスタマインの年額プランは、4、10、1000、3000と10から急に1000に飛びます。これは、できるだけ安く1000を提供して、アプリスロットを気にせずに使えるようにしたいという想いからです。もし100とかを作っていれば、今の年額1000相当の金額が年額100になっていたはずです。


6. 生き残りの限界

プラグインにせよ連携サービスにせよ「儲からないからやめます!」ってあっさり言われてしまうとみなさんも困ると思います。つまり、世に出す以上しっかりと継続できる体制を維持する必要があります。

カスタマインを出した当時はとっても廉価なプラグインが多く、正直なところ「ビジネスとして成立しているのすごいなぁ・・・」と思っていました。カスタマインの価格は、実は発表するまでに4回書き直しています。これはみなさんに受け入れていただける(であろう)価格かつ我々がビジネスとして継続していける価格のバランスを取った結果です。

カスタマインは実現しようとしていたことがプラグインにするには余りにもヘビーすぎたため連携サービスとして開発したわけですが、プラグインとして開発してもプラグインの価格帯と直接比較されるとビジネスとして厳しいという判断も少しありました。そのため、プラグインではビジネスのスケールに限界があると考えていまして、連携サービスとして自由度を確保した形での提供となりました。

正直なところ「高い」という声もちょいちょい聞きますし、最近は「kintoneは安いけど、結局プラグインとか連携サービスとか入れていくと高くなる」という声もXなどでみかけます。こういう方は何と比べて高いと言っているのかがわかりませんが、高いと思われるのは不本意ではあります。

カスタマインを単に機能の集合体だと思うと、単機能を使う方には高く見えるかもしれませんが、kintoneでの業務改善を支えるプラットフォームだと考えていただくと高くは見えないんじゃないかと考えています。(僕の勝手な考えではありますが)

最近は「サイボウズはエコシステムに遠慮してkintoneの機能追加をしないんじゃないか」とか言ってる人もいます。そういう側面も見方によってはあるかもしれませんが、機能追加はエコシステムに任せてプラットフォームとしてのkintoneをもっと強固なものにしていくのはサイボウズにしかできないので、そちらに注力してほしいと考えています。


7. 楽しみの限界

kintoneが好きな方は、kintoneで業務システムを作る楽しさを感じておられると思います。昔なら自分では到底作れなかったようなものがkintoneであれば作れるというのは脳内にアドレナリンがドバドバでる体験なんじゃないかと思います。僕のようなエンジニアからみるとkintoneで実現されることはそこまで大きな感動は(実は)ないのですが、自分で書いたプログラムが動く喜びはエンジニアとして理解していますし、kintoneが持つ楽しさも同じようなものだと思います。

この「自分で作れて楽しい」という世界観はkintoneの重要な世界観だと思っています。カスタマインは同じような体験をkintoneの機能拡張にまで及ぼしたいと考えていて、これは単機能なプラグインでは実現できないと考えています。

カスタマインで自分の考えた処理の流れが実現できて、それが想い通りに動く喜びを感じていただきたいです。

まとめ

繰り返しますが、プラグイン自体はいい仕組みだと思いますし、プラグインビジネスをダメだというものでもありません。ただこの記事で書いたような限界があったので、僕らが目指しているものとは違ったというだけです。お客さんの選択肢が多いことはいいことですし、みなさん適材適所で選択してkintoneをパワーアップさせて継続的に業務改善をしていってください。

画面のカスタマイズ、自動処理(バッチ)、帳票出力といった「kintoneの”できない”を”できる”に」
gusuku Customineがあればkintoneらしさをそのままにkintoneをカスタマイズできます

投稿者プロフィール

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金春 利幸
"gusukuシリーズプロダクトマネージャー
ノーコード(No-Code)の有効性に着目し、kintoneとgusukuシリーズの普及のため全国を飛び回っています。"