公開日:2021-10-14
gusuku Customineはkintoneユーザーにとって義務教育です
株式会社京屋染物店
代表取締役
蜂谷 悠介 様
創業100年を超える老舗企業の株式会社京屋染物店様に、gusuku Customine(JavaScript不要でサイボウズ社のkintoneをカスタマイズできるツール)導入の経緯と活用効果をうかがいました。
創業100年の染物店であり、kintone AWARD 2017グランプリ受賞企業
創業100年の染物店
京屋染物店は岩手県一関市の染物屋で、デザインから染め、縫製までを一貫して行っています。手掛ける製品には、祭り用品のオーダーメイド・OEM・自社ブランドなどがあります。同工場は世界的な繊維製品の安全証明「エコテックス®スタンダード100」の中でも最も厳しい「製品クラスⅠ」の認証を取得しており、工場の安全性を活かしたオリジナル商品の開発・製造も行っています。
kintoneは「全員経営」のための情報共有ツール
京屋染物店はkintoneで最もインパクトのある業務改善を実現した企業に贈られる「kintone AWARD」のグランプリ受賞企業であり、kintone界における有名企業の一つです。kintoneの導入は2016年で、当時はkintoneでオーダーメイド品の販売管理に取り組んでいました。2021年現在、同社のkintone活用は幅を広げ、全員経営を実践するための情報共有ツールとしても積極的に利用されています。情報共有は「社員が一丸となって経営に参加する姿勢に大きく寄与している」と社長の蜂谷氏は教えてくれました。
【課題】コロナ禍で「祭」の需要が無くなり、80%の売上が消失
コロナ禍で売上の80%が消失
コロナ以前、京屋染物店の売上の80%は半纏や浴衣など「祭」関連の受注生産品で構成されていました。ところがコロナ禍で祭の中止が相次ぎ、売上の柱を失ってしまいます。生き残るためには市場を変える必要がある。かくして同社は、テスト開発を行っていた自社製品の販売に本格的に乗り出すことになりました。東北の野良着を現代風にアレンジした「さっぱかま」、蜜蝋を布に染み込ませて作るエコな食品用ラップ「蜜蝋ラップ」などの自社商品が売れ始めると、京屋染物店は新しい課題に直面します。
【課題1】自社製品が増え、全社売上の把握が困難になった
自社製品が軌道に乗り始めると在庫数、販売数などを管理する必要性が出ました。そこで自社製品の売上や在庫を管理するためのアプリを一般販売価格用と卸値用のそれぞれの用途で作成しました。これまでは受注生産が中心だったのでオーダーメイド用の販売管理アプリがあれば業務は回りますし全社売上も把握できましたが、自社製品が加わったことで会社全体の売上を把握するには、新しく作った2アプリの数字も合算しなければいけません。しかしkintoneの基本機能では複数のアプリのデータを合計することができないため、社長の蜂谷氏が3つのアプリを閲覧し、手計算で売上や粗利の合計を算出することになりました。同数字は全社員にも共有するため、掲示板に集計結果を書き込む必要もありました。この連日の作業を蜂谷氏は負担に感じていました。
【課題2】納品処理と入金処理の手間が激増
京屋染物店では自社商品の販売数の伸びにより、これまで1日に数件だった納品処理や入金処理の数が数十件に膨れあがりました。これらの処理をkintoneの標準機能で行う場合、「受注データを1レコードずつ開き、編集・ステータス変更・保存する」必要があります。1案件を処理するためには平均4クリック必要で、1日に2業務合わせて80件ほど処理するので、スタッフは毎日320クリックを繰り返す日々を送っていました。そのためステータスの変更を一括で処理できるようにしてほしいと要望が出ていました。
「カスタマインは義務教育」
義務教育かあ、試しに使ってみるか!
蜂谷氏はこれまでは「やりたいけれどkintoneの基本機能だけでは叶えられないこと」を、有料・無料のプラグインを駆使して行ってきました。そんな同氏がgusuku Customineに興味を持ったきっかけは友人でありkintoneエバンジェリストの矢内哲氏のパワフルなヒトコトで、「蜂谷さんほどkintoneを使っておられる会社ならgusuku Customineは義務教育ですよ」というものでした。
蜂谷氏は「義務教育かあ、試しに使ってみるか!」と情報収集を開始。開発元であるアールスリーに「こんな使い方がしたい」と相談したり、gusuku Customineのセミナーを参考にしたりしました。その結果、「kintoneのこんなことできないかな?」をかなりの部分網羅できること、プログラミング言語が分からなくてもkintoneに指示命令できることが分かり、悩みごとを解消できると分かったので2020年にgusuku Customineを導入しました。
【カスタマイズと効果】月11時間の社長時間や、年120時間の作業時間を削減
11時間/月もの「社長時間」を節約
蜂谷氏は全社の売上と粗利を把握するために、オーダーメイド用・一般販売価格用・卸値用の3アプリから必要な数字を取得・合計できる「売上粗利管理アプリ」を作成しました。同アプリには、複数アプリの数字を取得・合計するためのカスタマイズがgusuku Customineで施されています。これにより売上と粗利の集計が自動化され、蜂谷氏は毎日の売上集計業務から解放されました。
「実作業は約15分ですが、取り掛かるためのストロークが必要だったり、途中で頭をポリポリしながら作業をしたりと、1日30分ほど集計作業に使っていました。1番人件費の高い私が1ヶ月に11時間もこれに使っていたのです。」と、蜂谷氏。
年120時間以上の「ステータス変更に使っていた時間」を節約
先述の通り、レコードのステータス変更をするにはkintoneの基本機能では「受注データを1レコードずつ開き、編集・ステータス変更・保存」という一連の作業が必要です。これを「レコードの一覧画面から一括処理」を可能にするカスタマイズをgusuku Customineで実装しました。これにより入金処理では「一覧画面の入金確認済のレコードにチェックを入れて保存する」だけで処理が終わるようになりました。納品処理も同様です。結果、納品処理と入金処理にかかる時間を、年間120時間以上、営業日にすると15日分も削減できました。
「もう絶対にgusuku Customineの無い状態には戻れないと思います。一括登録機能だけでも、1案件4クリック、80件で320クリックのところが、全案件合わせても41クリックで終わるようになりました。それだけで相当な時短ですし、働きやすさにもつながりました。gusuku Customineの費用対効果としては、この機能だけで十分効果があったと感じています。」と蜂谷氏。
【自社製品の効果】既存事業の80%を失うも、売上が昨対113%にアップ
自社製品の躍進で、売上が昨対113%にアップ
京屋染物店は自社製品に取り組んだ結果、コロナ以前である2019年と比べ、2020年の売上は113%にアップしました。「祭」を中心とする既存売上の80%を失いましたが、自社製品は劇的に売上を伸ばしたのです。自社製品を作ったことは、ネットショップで売る商品を手に入れたにとどまらず、「この商品の色を変えてユニフォームにしたい」というOEMニーズや、スノーピーク社など他企業とのコラボレーション企画にもつながりました。蜜蝋ラップや安全性の高い染め物などのエコな商品はSDGs関連の需要も呼び込みました。
gusuku Customineは、経営の可能性を見せてくれる
「社員ひとりひとりが誰の許可をとるということもなく、いかに世の中に貢献できるか、協力して世の中を良くしていくか、という姿勢で会社の取り組みを考えて動いてくれています。それが共感を呼んで口コミをいただいたり、コラボレーションに繋がったりしているのだと思います。そのため、誰が・どこで・どんなことを考えて・何に取り組んでいるのかを見える化し、情報共有をしていくことがさらに必要になってきますし、共有すべき情報は複雑になっていくと思います。
そのためには情報整理の仕組みが必要ですが、kintoneの基本機能ではできないことが沢山あります。世の中にはプラグインなど便利なツールもありますが、固定された機能しかありません。だからプラグインを探す前に、助けてドラえもんじゃありませんが、gusuku Customineで実現できるかを試すことになります。自分の発想ひとつで、たとえ行き詰った先であっても可能性をまた広げていける、これは凄いことです。」と蜂谷氏
【今後の展望】予実管理アプリに自動更新機能を実装したい
京屋染物店では予実管理アプリを使い、お金の出入りをしっかり把握していこうとしています。現在は数字を把握したい時に該当アプリで毎回「再集計」して必要数字を算出していますが、gusuku Customineに「アプリを開かなくても、定期的に別々のアプリに登録されている予算と実績を突合して自動的に予実管理アプリに保存する」ことのできる機能が登場したので、これを実装して自動更新される状態を作る予定です。
最後に、蜂谷氏からgusuku Customineを検討中の方にメッセージをいただいたので紹介します。
「gusuku Customineには、このボタンを押せばこうなります、といった分かりやすさが全く無いので、最初は不安に感じるかもしれません。だけどgusuku Customineは1が10になったり100になったりします。自分の発想次第で無限に可能性を広げていけるものです。もうこれは、kintoneユーザーにとっての義務教育です。ぜひ一度は取り組んでいただいて、その可能性に触れていただければと思います。」