公開日:2023-11-22
大量のプラグインを管理する手間から解放されるためにgusuku Customineに集約して社内活用を推進した
ロジスティード株式会社
人事総務本部 VCセンター RPAI推進G 部長補佐 松本 和久 様
人事総務本部 VCセンター RPAI推進G 安岡 則英 様
人事総務本部 VCセンター RPAI推進G 飯髙 誌凡 様
ロジスティード株式会社は、もともと、70年以上の歴史をもつ総合物流企業です。国内のサード・パーティー・ロジスティクスではトップシェアを持っており、国内334カ所、海外474カ所に拠点を展開しています。
デジタル活用を推進する流れでkintoneを導入し、gusuku Customine(以下、カスタマイン)でユーザーの細かいニーズに応え続けることで社内活用を促進し、業務改善やコスト削減を実現。現在は、全社で使うシステムをkintoneに移行するプロジェクトが動くまでになっています。
今回は、もともと部署ごとにスモールスタートしたkintone活用が、全社展開に至るまでの経緯について、人事総務本部 VCセンター RPAI推進G 部長補佐 松本和久氏、安岡則英氏、飯髙誌凡氏にお話を伺いました。
■場当たり的にプラグインを入れていたら管理しきれなくなった
松本氏たちが所属するVC(バリューチェンジ&クリエーション)センターは、ロジスティードグループの改善活動をリードする部署で、会社のあり方と進むべき道を示した、経営理念と経営ビジョン、行動指針、成功要件で構成される「LOGISTEED WAY」を具現化する活動を推進しています。
「その中で、RPAI推進Gは、特にデジタル技術を活用して改善を進めることに特化しています。2018年9月に部署が発足したのですが、それ以前から社内の部署によってはkintoneを使っていました。その後、2020年になって全社的に導入することになり、私たちが巻き取って全社展開することになったのです」(松本氏)
2018年の段階でも、例えば顧客情報や自分たちの事業の進捗状況などを管理したいというニーズがあり、部署ごとにkintoneを使っていました。
当時のRPAI推進GはRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の全社展開を担当していましたが、RPA案件が右肩上がりに増えていく中で、案件の管理が大変になってきました。安岡氏はすでにkintoneを触った経験があったので、試しに使ってみたら案件管理がとても楽になったそうです。
「最初は、別にkintoneを広げるというミッションはなかったのですが、自分たちが使い始めてとても良かったので、全社に広めていこうという流れになりました」(安岡氏)
ローコード・ノーコードツールとして、kintoneを選定した理由は、kintoneが日本で広がる状況を見て、まずは試してみようという、ライトな感じだったそうです。使ってみて、他にいいツールがあれば乗り換えればいい、という気持ちでスタートしました。
kintoneはナレッジが多いので広めやすく、料金体系も手ごろで、プラグインを使えば色々なことができるというメリットがありました。エンジニアでなくてもシステムを作れるというのは大きなメリットで、ロジスティードグループに合っていると感じたとのことです。
以前、別のシステムで、ユーザーがマクロやコードを使って自由にカスタマイズしていた時に、第三者には何をしているのかが把握できていませんでした。そこで、kintone導入の際は、基本的にコードを書いてのカスタマイズをしないことにしました。
しかし、もともとユーザーが自由にシステムをカスタマイズしていたこともあり、多様なニーズに応えるためにはkintoneの基本機能だけでは足りない部分がありました。
そこで活用したのがプラグインです。当初は、Cybozu Daysに参加して情報を収集し、ユーザーのニーズごとにプラグインを導入していました。カスタマインのこともイベントで知ったのですが、コスト面で折り合いがつかず、見送ったそうです。
しかし、社内のkintone活用が進むと課題が発生しました。大量のプラグインを次々と導入したため、管理の手間が大きくなってしまったのです。また、導入しているプラグインには無償プラグインも含まれていました。無償プラグインは、ある日突然使用できなくなるというリスクが伴います。実際に無償プラグインを入れていて、途中で使えなくなり、困っている部署もありました。
「kintoneはエンジニアでなくてもシステムを作れることがメリットだと思います。ですが、細かいニーズに対応しようとするとJavaScriptを書いてカスタマイズしなくてはならないうえ、ブラックボックス化してしまいます。カスタマインを使えば、やりたいことを組み合わせるだけでカスタマイズができますし、カスタマイズした人以外の人が見ても、カスタマイズの中身が把握できる点がいいと思い、活用を社内に提案しました」(安岡氏)
「色々なプラグインを入れるよりも、色々なことができ、大量のプラグイン管理から解放してくれるカスタマインを導入することにしました。実際は、やりたいことに対してそれぞれ個別にプラグインを選定して契約する方が安く済むかもしれませんが、将来性と発展性があるカスタマインを選びました」(松本氏)
■監査や秘書業務で利用するアプリをユーザー目線で徹底的にカスタマイズ
カスタマインが導入されると、これまで使っていたプラグインの置き換えが進みました。採番やルックアップの絞り込み、帳票出力、条件で色が変わるなど、様々なところをカスタマイズしました。
最もカスタマイズしているのは、「自己監査」アプリです。ロジスティードでは、不正防止やガバナンス強化のため、定期的に行われる本社部門による業務監査以外にも、セルフチェックとして自己監査を行っています。
これまでは、Excelベースで記録していたので、集計にとても手間がかかっていたそうです。また、データとしては残っていても、1回の監査ごとにファイルが分かれていたため、前回からどの程度改善がされたかの比較や、全社的にどの領域が弱いのかなど横断的分析が、実質的にはできていませんでした。そこで、kintoneで自己監査を標準化することで、データベースとして情報を残していき、問題があれば改善するという仕組みをつくりました。
「監査項目ごとに項目ナンバーや大項目、中項目と、細かい項目があり、監査を受ける側と監査をする側が、1つのレコードの中で交互に入力していきます。監査で指摘を受けると改善し、また監査人が確認するという流れです。カスタマインは監査のチェックリストを起票する際に利用しています。監査する部門やカテゴリーを選ぶと、必要な項目のみを起票するようにしました。あとは、上からチェックしていくだけです」(安岡氏)
kintoneに情報が記録されるようになったことで、全社的にどこが弱いのかがわかるようになり、その改善状況も簡単に把握できるようになりました。以前は、Excelを見比べて人間が定性的に見ていたのですが、kintone化することで、ある意味、点数化が実現したのです。
kintoneアプリで管理しつつも、カスタマインのExcel/PDF出力機能を使って報告書をExcelで出力しているそうです。経営上の規則に対応するためです。
「将来は、kintone内の情報をダイレクトに見てもらえるようにダッシュボード化しようと考えています。そうすれば、Excelファイルの出力は不要になると思っています」(松本氏)
もう一つ、カスタマインが本領を発揮したのが、役員のスケジュール調整をする秘書が利用するアプリです。秘書業務は、担当者の経験やスキルに依存する部分が多く、属人化しがちです。そのため、効率化を行うにはまず、業務の可視化・標準化に取り組む必要がありました。
例えば、社員が役員のスケジュールを押えたいときに連絡してきても、確定するまでに延々とやり取りが続くことが課題でした。日程だけでなく、要件の重要度や参加者、資料の有無、場所の確保など、確認事項がたくさんあるためです。
そこで、役員のスケジュール調整を依頼する側に、kintoneで情報を漏れなく入力してもらい、短時間で予定を確定させるようにしました。しかし、使ってもらうためには、秘書からのニーズに応える必要があります。
「まずは、会議場所の入力です。通常はルックアップで取得するのですが、マスターアプリに登録できない場所で会議することもあります。通常はグレーアウトして入力できないので、カスタマインでルックアップする項目を有効化して、手入力できるようにしています」(飯髙氏)
他にも、アプリ内のテーブルで参加者のリストを入力してもらうのですが、人数をカウントする際に課題が出ました。秘書はテーブルの行追加ボタン(「+」)を押してから参加者名を入力します。誤って参加人数より多く行を追加してしまった場合、カウントしたテーブル行数と正しい参加人数がずれてしまいます。そのため、氏名が入力されている行のみをカウントするカスタマイズを入れました。
「とても細かいところに見えるのですが、使ってもらえるアプリにするためには、実際に使うユーザーに納得してもらう必要があると考えています。 カスタマインがあるから様々な要望に応えることができました」(松本氏)
また、ロジスティードはグローバルに展開しており、海外からもスケジュール調整の依頼が来ます。このとき、先方は現地時間で入力してきますが、こちらでは日本時間で考えなければいけません。そこで、海外の拠点から希望日時が入力されると、カスタマイズでタイムゾーンをセットして日本の標準時に合わせています。
■カスタマインで640アプリをカスタマイズし、100人以上の開発者を育成
現在、kintoneのアカウント数は約1700、カスタマインによってカスタマイズされているアプリは640個にもなります。カスタマインを使いたい人は申請してもらい、アカウントを発行しているそうですが、その数、現在138人。カスタマイン導入企業の中でも、トップクラスに多い人数になります。
「kintoneの社内教育用コンテンツがあるのですが、その中に、kintoneの基本機能だけでできないことも、プラグインや連携サービスで実現できると解説しており、ここで、カスタマインの基本的な部分を紹介しています。また、開発者育成コースの中で、カスタマインに触れてもらうようにしています。今は、2週間に1回、このようなコンテンツを活用したオンラインでの社内教育会を開催しており、徐々にカスタマインユーザーが増えています」(松本氏)
社内教育用コンテンツには、アールスリーが公開しているカスタマインの学習コンテンツへのリンク集や、実際にカスタマイズをするなかでチャットサポートに投げかけた質問とその回答集、社内FAQなどが盛り込まれており、VCセンターが社内のユーザーをしっかりとサポートしています。
kintoneをVCセンターが管理するようになり、ガバナンスも強化しました。原則として、各部署の自己判断でプラグインを入れられないようにしました。ガイドラインを設け、プラグインが必要であれば、申請してもらうようにしたのです。
kintoneとカスタマインを活用し倒して、ものすごく大きな業務改善を実現している事例でした。カスタマイズの量もそうですが、ユーザーの要望に寄り添って応える、という姿勢が社内浸透を成功させた要因だと感じました。ここで、インタビューに応じてくれた、飯髙氏と安岡氏にカスタマインの気に入っている点を伺ってみました。
「本来、kintoneをカスタマイズしようとするとJavaScriptを書かなければならないのですが、カスタマインがあれば専門知識がなくても実現できるというところがいいですね。あとは、本当にサポートが親切なので、問題が起きても解決して作っていけますし、またこの学びを次の開発に活かしていけるのが助かっています」(飯髙氏)
「私はJavaScriptを書けるので、カスタマイズをしたこともあるのですが、しばらくすると、自分でも何をしたのか理解するまでに時間がかかってしまいます。その点、カスタマインなら、見れば何をしているのかがすぐにわかるので、システムの透明性とか保守性がすごく上がりました」(安岡氏)
最後に、今後の展望について伺いました。
「現在、全社で使うシステムをkintoneで開発しているところです。古くなったシステムなどをkintoneに置き換えているのです。その時に、カスタマインが活躍してくれると思っています。今後1~2年で、kintoneユーザーを1万人くらいまで増やし、kintoneを使うのが当たり前になる、というところを目指しています」と松本氏は締めてくれました。
取材日2023年6月