公開日:2023-12-22
専門知識がない自分でもできる! kintoneとgusuku Customineで役場の業務を効率化
新富町役場
総務課 情報化推進室 係長 松尾 健太郎 様
情報化推進室 主任主事 森川 尚彦 様
税務課 収納係 係長 関屋 博之 様
財政課 管財入札係 係長 轟木 威人 様
宮崎県の新富町は人口約1万7000人の町で、コシヒカリのほか、様々な野菜や果物の栽培が盛んです。特に、新富のライチは特産品となっています。町の中央部の高台には航空自衛隊新田原基地があり、以前は飛行教導群の本拠地でもありました。
新富町役場では、職員と会計年度任用職員を合わせて約220人が働いています。自治体あるあるの課題ですが、アナログ作業が多く、デジタル化されている業務でもデータの活用ができていないという状況でした。そこで、2022年に実施されていた自治体向けkintone1年間無料キャンペーンを利用してkintoneとgusuku Customineを使い始めました。そして、見事大きな導入効果を実現できたため、2023年から正式契約をスタートしました。
今回は、kintoneとgusuku Customineを同時に導入し、役場のいろいろな業務をデジタル化した経緯について、総務課 情報化推進室 係長 松尾健太郎氏、同じく情報化推進室 主任主事 森川尚彦氏、税務課 収納係 係長 関屋博之氏、財政課 管財入札係 係長 轟木威人氏の4名にお話を伺いました。
■内部の業務フローをDXするためにガブキンに参加した
新富町のDXを進めている情報化推進室はパソコンの設定をはじめ、庁舎内に入っているシステムの管理や故障対応などを行っています。また、新富町役場は町民の光ファイバーを導入する際の担当窓口になっており、その受付業務も担っているそうです。
情報化推進室が発足したのは2020年4月でした。2018年に新富町長選挙があり、小嶋崇嗣氏が町長に就任しました。当時47歳と若く、「これからはデジタルだ!」と旗を振ったことがきっかけです。
時代に合わせた業務のIT化が進められる中で、まずは電子申請を取り入れました。Webフォームを構築し、町民からの申請をデジタルで受け付けるようにしたのです。そのおかげで、町民の利便性は高まりました。ただ、新たな課題も出てきました。
「受付フォームを作るのは簡単でしたが、情報を受け入れたあとの処理に手間がかかっていました。データは溜まるのですが、結局CSVファイルに出力し、決められた様式に転記する必要がありました。内部で決裁するため、紙に印刷してハンコをもらって回るようなこともあったのです」(森川氏)
一部デジタル化はされたものの、内部の事務処理量は変わらなかったのです。それどころか、電子申請と従来通りの紙の申請を別々で管理しなければなりません。これでは、果たしてDXが進んでいるのか、どうにかならないか、と悩んでいました。実際庁内では、「たいして楽にならないのに、こんなことまでしなければならないの?」といった声も上がっていたそうです。
こうした悩みを解決できないかと考えたところ、以前から知っていたkintoneのことを思い出しました。
「kintoneの存在は前から知っていました。最初のWebフォーム導入の時にもkintoneを検討したのですが、自由度が高いが故に分かりづらい部分があったので見送った経緯があります。しかし、kintoneであれば、承認ワークフローを組み、外部から入力されたデータをそのまま上長の承認まで一貫して処理できることが分かりました。その方が、職員の利便性が上がるのではないか、と昨年度にkintoneのトライアルを開始しました」(森川氏)
2021年にkintoneが「政府情報システムのためのセキュリティ評価制度(ISMAP)」に登録されていることもチャレンジした理由の一つとのことでした。
1年間kintoneを試用するにあたり、「ガブキン(GovTech kintone Community)」へ参加することになりました。ガブキンは自治体職員向けのkintoneを活用したDX・業務改善力を身につけられるコミュニティです。このガブキンの中には「ガブキン道場」という全8回のセミナーがあり、その中でgusuku Customineを紹介していただいたそうです。
「ガブキン道場でgusuku Customineを使ってみて、kintoneの基本機能だけでは満足できなくなってしまいました。アプリをいろいろカスタマイズできるのはとても便利で、今年度kintoneを正式導入する際もgusuku Customineが必要だよね、ということになりました」(松尾氏)
■Excelを毎週取り合う無駄な作業をkintone×gusuku Customineでアプリ化した
ガブキン道場で作成し、今でも活用しているのが「消耗品管理」システムです。業務で使う文房具などの消耗品は毎週決まった曜日に申請することになっています。以前はこの申請を共有サーバー上に保存してある、ひとつのExcelファイルだけで受け付けていました。
もちろん、誰かが編集しているときは、他の人は作業できません。期限の日に皆が焦ってアクセスするので、何度アクセスしても編集できない、という状況になっていたそうです。また、申請は各課で一度紙に取りまとめて、Excelに入力する流れになっており、その手間も発生していました。
これを解決するため、kintoneで「消耗品マスタ」「在庫」「請求※」という3つのアプリを作成しました。
※新富町役場では申請をあげることを「請求」と呼んでいます。
消耗品の使用を申請する際には担当者が「請求」アプリに登録します。その際、ルックアップで「在庫」アプリから現在の在庫数を取得します。基本機能のみでは、「在庫」アプリに登録されている現在の在庫数を取得することはできますが、申請した数量を在庫アプリに反映することができません。
そこで、「請求」「在庫」アプリの間で連携を行うためにgusuku Customineを使用しました。松尾氏は gusuku support の「ナレッジベース」で公開している「2つのkintoneアプリを連携して在庫引当を行うカスタマイズ」(https://support.gusuku.io/ja-JP/support/solutions/articles/36000050391 )を見て、参考にしつつカスタマイズを行ったそうです。
このカスタマイズにより「請求」アプリで登録した内容が「在庫」アプリに反映されるため、転記の手間がなくなりました。
「みんながいつでも好きな時に請求できるようになり、便利になりましたし、請求忘れも防止できます。毎週各課で取りまとめて転記するという無駄な作業もなくなりました。会計課も申請が締まってから確認するのではなく、入力されたらすぐに準備できます」(松尾氏)
また、レコードを登録したらプロセス管理で承認に回すのですが、いちいちボタンをクリックさせるのも手間なので、自動的にステータスを更新するカスタマイズも入れてあります。
新富町は防衛関係の補助金など、入札の件数が他の自治体よりも多い傾向にあります。財政課では、入札時に業者を選ぶ審査会があるのですが、これまで審査会で使う資料の取りまとめに手間がかかっていたという課題がありました。紙資料を印刷した後に軽微なミスが見つかることが多く、そのたびに再印刷して差し替えるという作業が発生していたのです。
「入札なので期限までに作業を進めなければならず、Excelで進捗を確認していました。この管理が大変で、常にこのことを考えていなければならなりません。とは言え、いきなり業務フローをkintoneに切り替えようとすると「自分が楽をしたいだけでしょ」と言われる可能性もありました。そこで、自分の(税務課への)異動が決まってからアプリを作り始めました」(関屋氏)
この先何年も同じようなミスを繰り返す可能性があることを見過ごすことができなかった関屋氏は、流れを断ち切るため異動を機に手を挙げました。みんなの作業負担が減って便利になれば、次に続く人も出るという想いもありました。そこで、kintoneとgusuku Customineを使うことで、入札依頼書を効率的に管理できるようにしたのです。
「指名業者等推薦調書兼入札依頼書」というアプリを作成し、適切でない内容が入力されるとエラーが出るようにカスタマイズしました。例えば、見積入札の場合は決裁者が担当課長となるはずなのに、異なる役職が選択されていると、赤くエラーメッセージが出るようにしたのです。
また、審査会では参加者全員がパソコンを利用し、kintone画面で確認することでペーパーレスも実現しました。資料を紙で印刷しなくなったので、情報の更新があっても再印刷する必要がありません。
現在、財政課で働く轟木氏はこのシステムを使い、効率的に入札を管理しています。以前は別の課におり、入札を依頼する側でもあったので入力ミスを指摘されることもありました。
「僕はシステムができてから異動してきたのでアフターしか知りません。ただ、はたから見ても入札関係で残業していた人はかなり多いという印象でした。今は、この業務で残業することはほぼありません。財政課になって、システムの恩恵を受ける側になったので本当にありがたいなと思っています」(轟木氏)
轟木氏もガブキンに参加し、kintoneアプリの開発にチャレンジ。高齢の町民向けのスマホ教室を開催するにあたり、申し込みを管理するアプリを作成したそうです。
他にも、松尾氏は職員採用試験の情報管理でgusuku Customineを活用しています。これまではExcelで管理し、必要に応じて紙に印刷して利用していました。この仕組みをkintone化することで、必要な人が必要な情報をkintoneで確認できるようになりました。とは言え、審査する時には紙に出力する必要があるため、そこはgusuku CustomineのPDF出力を利用しています。
■kintone導入から約1年、大きな業務改善を実現。その中でgusuku Customineが役立った所とは
「kintoneの基本機能だけだとできることに限界があります。Excelの置き換えにはなるのですが、現場のユーザーにとって便利なアプリにはなりません。gusuku Customineでカスタマイズすることで、使い勝手がよくなります。あと、見栄えが良くなるという点もシステムを使う側からすると重要なポイントです」(森川氏)
「アプリを用意しても、想定していない入力をされることがあります。そんな時も、gusuku Customineを使えば、必要な所に必要な情報を配置できます。できたらいいな、と思っていたカスタマイズを専門知識のない自分でもできるところが、かなりいいなと感じています」(関屋氏)
最後に今後の展望を伺いました。
「今でも、各課からExcelの動作がおかしい、と呼ばれることがあります。まだまだ役場の中にはExcelがたくさんあるので、kintoneとgusuku Customineで業務改善につなげることができればいいな、と思っています」(森川氏)
「gusuku Customineに関して印象に残っているのが、ガブキン道場で「kintoneでやりたいことの8割はgusuku Customineでできる」と紹介されたことです。確かに、こんなことができないかなと思って調べると、8割ぐらい実現できる感じがあります。今後は、外部サービスと連携しWebhookを使った申込人数の自動集計カスタマイズや、年齢を自動で更新する定期実行タスクを活用していこうと思います。後は、カスタマイズできる枠(アプリスロット)が1000個もあるので、みんなにじゃんじゃん使って欲しいですね」と松尾氏は語ってくれました。
取材2023年9月